第97話 ゴーレム試行錯誤
「う〜ん、思っていた以上に飽きるのが早いね」
障害物にぶつかったら方向転換する様にしたものの、基本的に真っ直ぐ進むお手軽なプログラムを組み込んだ小型ゴーレムは、最初は源之助に大好評だったのだが・・・半日程度で飽きられてしまった。
「速度に緩急をつけて、そろそろとゆっくり動きつつ、時折警戒しているかの様に止まりながら動く方がいいんじゃないかな?」
小型ゴーレムを無視してテレビのコンセントに噛みつこうとして、シロちゃんに邪魔されている源之助を見ながら碧が応える。
普段だったら碧が家にいる時は碧が猫じゃらしを動かしまくって源之助の注意を引くのだが、今日はちょっと小型ゴーレムの試行錯誤に付き合って貰うためにオモチャは手に持っていない。
源之助が家に来て以来、食事の時以外は基本的に家の中では猫じゃらしを手放していなかった碧なのでちょっと手持ち無沙汰な感じだ。
まあ、もうそろそろ軽く猫離れしても良いよね?
「転がるスピードを落として、あとは一回転ごとに3秒ぐらい静止する様にでもしてみるか」
下部に小さな車輪の付いた鼠のオモチャとボールのオモチャを簡易ゴーレム化して比較してみたところ、ボール型の方が動かすのに必要な魔力が小さかったのでそちらにした。
誤飲しないように飲み込めないサイズでありながら咥えるのには大きすぎず、魔力を込めやすい素材で・・・となると中々難しく、ネットで探しながら唸っていたら碧が大量に色々なのを買ってきたせいで今は家の中が猫のオモチャ用ボールだらけである。
良い加減邪魔だったので殆どは籠に入れて棚の中に仕舞ってあるが・・・あれを使い切る日は来るのかね?
鼠型おもちゃの方が脆いのか案外とあっさり源之助の噛みつき攻撃にボロボロになっているのだが、何故かボールは単純な形である代わりに耐久性が高く、まだ1個しか消耗していない。
源之助が成猫になったらそこまで激しく遊ばなくなると考えると、源之助の寿命が切れる前に碧が山ほど買ったボールを使い切れるか、かなり怪しい。
まあ、源之助の猫又化が上手くいけば寿命がぐっと長くなるが・・・猫又にまでなった長寿な猫がボールをボロボロにする程熱心に遊ぶとも思えない。
どっかの猫を保護するNPOにでも一部寄付した方が良いかな?
あんまり古くなったら素材そのものが脆くなって変に壊れて誤飲出来てしまうかも知れないし・・・。なんと言っても棚の2段分もあるボールは邪魔だ。
それはさておき。
源之助に無視されても物悲しく転がっていたボールを手に取り、捻って中を開けて魔石モドキを取り出す。
源之助に噛まれてもうっかり開いて中の魔石モドキを誤飲されない様に工夫するのにも、苦労した。
意外と碧が器用だったので2つ目の試作品からはこの仕組みを造るのは彼女に任せているが、一度出来上がれば比較的簡単に出し入れは出来る。
ゴーレムの魔法陣は土系の魔術師が得意とする分野なのだが、擬似魂を作ってそれで動かす形にするならば黒魔術師でも出来る。
ただし、そうすると単純作業には向かない高級路線なゴーレムになってしまい、そこまで高級なのだったら普通に使い魔を使えば良いという説もあったのだが・・・今回は源之助に飽きられないだけの動きが出来るゴーレムを作るという目的には丁度良かった。
ただまあ、魔素が薄い世界なのに意外と行動定義の変更に魔力を食われ、魔力切れを何度か起こして慌てたが。
先日大型案件を受けて、暫くは仕事はしないと言えそうな状況で良かった。
総魔力量が増えてきた最近では魔力切れを起こしたら1日で完全には回復しない。
しかも細かな修正の為に魔力を使い続けているので、ここ数日は殆ど気絶する勢いで寝付いている。
「これでどうかな?」
修正を加えた小型ゴーレムを床に置き、音を立てて源之助の注意を引いてから起動させて逃げるかの様に源之助と反対の方向へ転がす。
「お!
食いついたね」
ばっとダッシュしてボール型のゴーレムに噛み付いた源之助を見て碧がコメントする。
「後はどの程度興味を持ち続けてくれるかだよねぇ・・・。
何通りか違う動き方と見た目の小型ゴーレムを作っておいて随時入れ替える様にでもする?」
源之助の様子を見ながら提案する。
意外と源之助って飽きっぽいんだよねぇ。
執拗にいつまでも遊びたがる癖に、同じことを繰り返すのは嫌がるんだから。
我が儘お坊ちゃまだ。
うちに来て直ぐの頃はもっと単純で手間が掛からなかったのだが・・・これも育って賢くなってきた証拠なのかね?
対応が面倒になる中途半端な賢さは要らないんだけどねぇ。
どうせだったらクルミやシロちゃんの説明を理解して覚えてくれる方向に賢くなってくれれば良いのに、注意事項に対する忘れっぽさはあまり変わってないのは、子供だからか、猫だからか・・・。
答えがちょっと怖いな。
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