第98話 スライム
「良いなぁ。私もゴーレムとかって作れるようにならん?」
何度目かの修正を加えた小型ゴーレムのボールを源之助が追いかけるのを見ながら碧が聞いてきた。
源之助の為にゴーレムを作ってあげたいのかな?
何と言っても碧は健康にしてあげられるんだから、悪戯防止に遊び相手を作るゴーレム作成よりもよっぽど有意義だと思うが、源之助に関わることは全てやってあげたいようだ。
「白魔術師は作るとしたらフレッシュゴーレム系になるからねぇ。
魂を埋め込む使い魔にしないんだったらスライムレベルになるから、こっちの世界では難しいんじゃない?」
フレッシュゴーレムとは生体で作り上げるゴーレムだ。
腕が良い白魔術師だったら時間と金さえかければ見た目は完璧に人間に見えるフレッシュゴーレムを作ることも可能なので、愛する人を亡くした金持ちが白魔術師にフレッシュゴーレムを作らせて、黒魔術師に本人の魂を喚ばせた上で使い魔とする事も時折あった。
妻を亡くした夫がやる程度だったら良いのだが・・・場合によってはストーカーが執着した相手を殺してフレッシュゴーレムの使い魔にする事もあり、これも黒魔術師の悪評に繋がっていた。
大多数の案件は誰かが金を払って黒魔術師に手伝わせているだけで、しかも殺した後(自然死の事もあり)なのだから黒魔術師の責任ではないとも言えそうなものだが・・・身体を作る依頼を受けた白魔術師は罰せられないのに、魂を呼び戻した黒魔術師は厳しく罰せられるのだから不公平だと思ったものである。
しかも私を奴隷モドキに使っていた
まあ、この時は『うっかり』失敗してしまったので霊は消えてしまったが。
元々、散々
細心の注意を払って扱わねばならないぐらい弱っていたので、細心の注意を払えとはっきり命じられなければ失敗するのは当然の結果と言えた。
「フレッシュゴーレム?
なんかこう、死体の集合体みたいなイメージなんだけど!?」
碧が微妙な顔で聞き返してきた。
「まあ、成分が近いから死体を集めて作るのが一番楽だとは聞いたけど、魔力と水と炭水化物とかだけでも作れるらしいよ?
ただまあ、肉体って動かすのに複雑な制御が必要じゃない?
だから魂を入れて使い魔化しないと上手く動かないんだよねぇ。
手足のないスライム程度だったら何とかなるけど。
あ、植物系の簡単なゴーレムだったら可能かも?
でも、食虫植物みたいな攻撃的な動きしか出来ないから、あまり源之助の子守りには向かないかな」
スライムは身体が脆いので源之助の相手をさせたら半日でボロボロになって崩壊しそうだし、食虫植物系のを大きくした場合は源之助の相手をしても直ぐには死なないかも知れないが、ヘタをすると源之助の首に絡まったりしかねないので危険だろう。
「スライム??」
碧が目を輝かせた。
「ドラ◯エみたいに可愛いのじゃないよ?
べちょっとした粘体ね。
ラノベにあるような無敵系でも無いし。
ある意味、ダンゴムシとかと同じで自然の掃除屋的存在?
酸性もそれ程強く無いから生きている人間に取り付いて殺すってことはほぼ無いね。
指で掻くだけで身体を破れるから無意識にでも体が動く状態だったら押し退けられるし。
まあ、ディスポーザーが台所についていないなら生ごみの掃除役に良いかもって程度?」
フレッシュゴーレム造りが趣味だった白魔術師の話では、スライムは生き物の中では最も原始的な生物の一つだった。
それがこちらにいないという事は、スライムは何らかの形で魔素を必要とする生物だったのだろう。
まあ、こちらにはゴブリンとかも居ないから、単に進化の過程が違うと発生しないだけなのかも知れないが。
ある意味、前世と今世の生物のDNAがどんな風に違っているのか調べられたら面白いのに。
・・・炎華の抜けた羽でも調べさせて貰えないかな?
とは言え、考えてみたら理系じゃない私ではどうやって検査するのかも分からないし、結果の評価も出来ないから調べても無駄か。
本当に、もっと理系な頭で生まれたら色々と興味深い研究が出来ただろうに。
まあ、金にはならなかっただろうから時間を無駄にしなくて良かったのかもだけど。
「試しにスライムを作ってみたい!」
碧が源之助用オモチャを振り回しながら言う。
「う〜ん、授業の最中にさらっと話で聞いただけだから上手く行くかわからないし、こっちじゃ直ぐに崩壊しちゃうと思うけど、やってみる?」
下手に増えたら特定外来種どころでない問題になるが、多分今世の魔素の薄さだったら分裂したりしないだろう。
一応この家に厳重に結界を張ってから実験するけど。
さて。
必要な材料ってなんだったっけ?
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