第87話 ダイエット用グッズは危険?
「思ったんだけどさ、源之助と時間を建設的に過ごす為にも家でグッズの開発に挑戦しない?」
朝食を食べながら昨晩考えた事を碧に提案した。
源之助と遊んでいる間は開発なんてやっている暇は無いが、子猫だけあって彼もそれなりに昼寝するのでその間に作業は出来る。
特に午後は昼過ぎに餌を食べた後はとても眠そうにしていてオモチャへの反応もおざなりだし、気がついたらクッションに埋もれて夕方まで寝ている。
これでシロちゃんの尻尾をボロくする時間がいつあるのか、本当に
うっかりクッションでなく膝の上で寝られた場合は身動きが取れなくなるけど、そうでなければ基本的に静かにしている分には午後は落ち着いて符を作成したりグッズのアイディアを練ったり出来る。
「そうだね。
協会から独立した収入源がある方が良いし。
まずは神社の方で売る安眠と肩こりのお守りを試作してみる?
実際に効くにしても、中を開けて見られてた時に幻滅されると有り難みが薄れて信じて貰えなくなるから、それなりな見た目になるよう工夫する必要があるよ」
目玉焼きに醤油をかけながら碧が応じた。
碧は醤油派、私は塩胡椒派な為、目玉焼きの時は味付けは各自別々にする事になっている。
もっとも朝食はスクランブルエッグとか卵かけご飯の方が多く、こちらに関しては特に好みに違いは無い。
時折カリカリに焼いたベーコンと目玉焼きを食べたくなるので出すのだが・・・どう考えてもベーコンと一緒に食べる目玉焼きに醤油だなんて、邪道だ。
理解を超える。
が、食べ物の嗜好と言うのは育った家庭環境も関係するので、口には出していない。
ちょっと碧は塩分取りすぎな時もある気がするが、なんと言っても回復術の使える白魔術師なのだ。本人はどれだけ塩分取りすぎでも大丈夫だろう。
一応、今のままの食生活だとそれを食べて育つ子供が、独り立ちした後に高血圧で若死するかもよ?とは言ってあるが。
味覚の調整も黒魔術で出来ないことは無いが、流石に頼まれもしないのにそう言う事に首を突っ込むのは過干渉で気持ちが悪いだろう。
高カロリーな食べ物や塩分過多な味付けが好きすぎる人の嗜好修正を商売に出来たら儲かる上に人助けにもなりそうだが・・・人の思考を曲げられますって公言するのはヤバそうだ。
食事の好みなんて言う基本的な嗜好に影響を与えられると知られたら、政治的信念や部下の評価などにも影響を与えられると思われて(実際に出来ちゃうし)、人として手を出すべきでは無い方向の依頼が集まりそうで怖い。
黒魔術って悪い方向での使い勝手が良すぎて、安全に使える用途が限られてしまってマジで困る。
今世では退魔師なんて言う無難な収入源があって本当にラッキーだった。
それはさておき。
「思ったんだけどさ、肩凝り解消のお守りも良いけど、ダイエットに白魔術が使えるなら減量が上手くいくお守りって言うのもガッツリ売れるんじゃない?」
肩こりの方が悩んでいる人口は多いかも知れないが、絶対にダイエットの方が金を出してでも成功させたい人間が多いだろう。
と言うか、簡単に摂取カロリーを制限できるんだったら、太ってなくても好きなだけ高カロリーな食事を楽しむ為にダイエット用のお守りを買う人も多いのでは無いだろうか。
現代日本だったら肥満と言うのはセルフコントロールが出来ない証拠と見られる。体重を気にする女性だけで無く、普通の男性でもお守りを買う程度の金額で体重制限が出来るなら買う人は多いと思う。
体質的にいくら食べても太らない様な人間は要らないだろうが。
そう言う人には二日酔い避けとかのお守りが良いかも?
黄身の部分へナイフを入れて、黄身を目玉焼き全体に広げながら碧が顔を顰めた。
「私のダイエットって回復術を逆回転させている様な物だから、継続的に使うとちょっと危険なんだ。
お守りとして売るのには向いてないと思う」
回復術の逆回転?
そう言えば、白魔術師って実は近接戦闘では一番危険と前世では言われていたっけ。
「ああ、癒すんじゃ無くて壊す方に力を使うの?
何を壊してるの?」
「壊すって程じゃ無くて、腸の吸収機能を一時的に低下させてるの。
だから下手すると体調次第では便秘や下痢になりかねないし、そうならなくても使いすぎたら栄養失調や貧血で倒れちゃうから健康状態をモニター出来ない相手に使うのは危険なんだよね」
オレンジジュースに手を伸ばしながら碧が答えた。
なるほど。
ダイエット成功のお守りはダメか。
いくら効果があっても利用者が倒れるような物は困る。
だが。
「モニター出来る相手に使う分のは大丈夫なんでしょ?
だったら今度一緒にホテルのスイーツブッフェを食べに行かない?」
黒魔術のダイエットは食欲そのものを制限したり、野菜を食べたくなるようにするので、安全かも知れないが実際に食べたカロリーはそのまま吸収されてしまうのだ。
だからスイーツや焼き肉は節制する必要があったのだが・・・碧が居れば、無敵だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます