ジ・エルエンド

白月木子

プロローグ

「被告人は――」

 BGMのように聞き流しながら、脳の暇を潰す。

 ――思うに、神も失敗する。

「――の罪状により」

 ――その失敗を正すことを、

「――」

 ――悪と呼ぶか?

 ずらり、前方に並ぶ陪審員たちは、石にされるとばかりに怯んで目を合わせようとしない。

「殺しちまえっ!」

 後方から威勢の良い声が飛ぶ。振り向く気がないので顔は見えないが、その面はだいたい想像つく。酒で膨らました腹からゲップを出し、"最近の若者"とやらを嘆くオヤジのそれだ。

 ――間違った世界の、間違った設計の人間たち。

「ははっ」

 心底ばかばかしくて、笑った。

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