第1章 第2話
真樹夫は、一般家庭でも大きめの一戸建ての住宅と比べてもかなり大きな2階建ての住宅の前で車を止めた。家の周りには塀やフェンスと言えるものは一切なく、周りに広がっている平原との境目が見ただけでは分からない。真樹夫は路上に一旦止めた車を、家に向かって走らせ、家の前の広い庭に停めた。真樹夫と萌子と輝夫は車から降りると、家の玄関に向かって進んでいった。塗り終わったばかりの外壁は、角度を変えた位置に立つと焦げ茶色の光を反射させた。
3人は玄関前に立った。真樹夫はポケットから鍵を出して玄関の扉の鍵を開けた。玄関で靴を脱いで広いホールを通っていくと、3人の6つの瞳に広い応接室とダイニングキッチンが映った。
「まるで豪邸だね」
真樹夫が言った。
「東京のあの狭い家を考えると別世界だわね」
萌子が言った。
「あの家は狭いけど、都心にある一戸建てだったからね。駅に近いし、近くにスーパー、銀行、病院・・・必要なものは何でもあったからね」
「ここは買い物に行くのに、一番近い店に行くのにはどれくらいかかるのかしら」
「そう、そのことが心配だったので、何度か下見に来て確認したんだけれど。この道路の先にまた林が見えるね。でも、そこは数分で通り抜けて丁字にぶつかる。丁字でぶつかる道路は4車線の道路だ。その道路は国道で、左折して進むとすぐに道路の左側にショッピングモールがある。そこには店ばかりではなく病院や銀行もある。ショッピングモールの入り口まで10分ちょっとで行けるはずだよ」
「それなら安心だわ。あとはインフラの確認かしら」
「それについては、何度も契約の時に確認したから心配ないよ。ほらもうWIFIが繋がっているし」
真樹夫はスマホの画面を見ながら言った。
「あとは、輝夫の学校をどうするかだけだね。輝夫、学校どうするの?やっぱり行きたくない?」
萌子が言った。
「父さん母さんには悪いけど・・・もう無理だよ」
「ごめん・・そのためにここに来たのに。ごめんね、余計なこと言って」
萌子が言った。
「3人でじっくり話して決めたことだから・・・力を合わせて頑張ろう」
スマホの画面をみながら真樹夫が続けて言った。
「フリースクールでの学習を認めてくれる中学が近くにあるか調べてみよう。そしてまず輝夫の学籍をそこに移さなければね。僕のテレワークの準備はその後でいいや」
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