目が覚めたら、もふもふに囲まれたい

かむヨン

第1章

第1話 二度寝しただけなのに


 目が覚めたらそこは、異世界でした。


 なんていうシチュエーションは、小説の中だけだと信じていたさ。


 けど、実際に体験してみると、怖いというよりも


 感動を覚えるよね。うん。


 いや、感動とかの問題じゃないよ!


 ここどこですか!


 日本でこんなところ見たことも聞いたこともないよ!


 そして!


 私の休日!


 マイベット!マイマクラ!!


 どこいったーー!




 …落ち着け私、こういう時は冷静になって周りをよく観察して


 状況把握することが大切みたいなことを、聞いたような聞いてないような!




 まぁ、とにかく周辺にあるもの


 まずは、私の目の前には神殿みたいな大きな建物にそれに見合った門と後には、暗さも相まって薄気味悪い森が広がっている。ついでに言うと、なんか変な鳴き声もしてるし。


 これ、絶対森で死ぬフラグじゃん


 変な生き物とかに襲われて死ぬフラグたちまくりやん、足が震えるわ




 でもなーここにじっとしてても、怖いしなー


 この門の中もなんか怖いし


 てか、なんで私こんなところにいるんだろう


 学校もバイトも休みの日だったから、二度寝してたんだけど


 それが悪かったのかな




 いや、それにしても代償が大きいでしょ


 鬼畜すぎやん


 私二度寝しただけやん


 ベッドに戻せや神様!


 1番大事ベッド!!




 ……


 文句を吹いてても事が進む訳でもないし、どうしたもんかなぁ


 異世界トリップの小説では、大体怪しい方に進む人が多いよね


 てことは、目の前の神殿みたいな建物…


 不気味なオーラ出しまくりやん


 怖いわ!ホラーゲームの館並に怖いわ!


 チキンな私はやっぱり森の方に進むか…




 よっこらせいっとと腰を上げる


 今おっさんとか思ったやつ


 君らもいつかおっさんになるんだからな!


 まだ私は、18だけどね!


 もう腰とか痛みだしてんだかんな!


 それ…「ゔぅうぉぉ…おぉ…」


 私の話をきって聞こえる呻き声


 …


 やばい、これは絶対に振り向いたらいるやつ


 けど、振り向いてしまうのが人間の性かな




 私が森の方に振り向くとそこには、ホラー映画やホラーゲームでよく目にする1度は死んだような見た目の人たち


 そう、そこには大人数のゾンビたちが私の数百メートル先でのろのろと歩いてた


「結構遠かったよ!そして、遅いし!ビビらせないでよ!」


 私がそう叫ぶとゾンビたちはイナバウアーを突然するとさっきとは比べのにならないくらいの速さで走ってきた




 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?


 なに怒ちゃった!?


 私が遅いって言ったから!?それとも、案外遅いから余裕みたいなことを思ったのがバレた!?ごめんなさい!?


 謝ってる場合じゃない!


 と、とにかく逃げなきゃ!数百メートルあった距離も、あとちょっとだし!?


 どうしよう!?入るか!?入るしかないのか!?この神殿に!?


 くそおぉぉおお!!もうこうなったらやけくそだ!!全然ない私の勇気!ふりしぼれ!


 足に鞭打って走り出した私は神殿の前まで来ると、ありったけの力で門の扉を押す


 すると、そんなに力まなくても扉は開き力を入れすぎた反動で前転するように中に転んでしまった


「い、痛い…受け身とれなかった…はっ!イナバウアーゾンビは!?


 …あれ?」


 入ってきた場所を見ると、そこには何も無かった


 そう何も、あるのは石の壁のみ


 へっ?扉がない!?なんで!?今さっきあったのに、どういうこと?


 不思議すぎる!?ゾンビからは助かったけど、これ出れないよ!どうするの!?


 落ち着け私!深呼吸だ!吸ってー!はいてー!


「すぅーーはぁーー…って落ち着けるか!!こんな場所で落ち着けるわけないわ!ゾンビ怖かった!なんなのあれ!なんでイナバウアーしたら速くなるの!?おかしいって!?新種すぎるわ!?怖いわ!


 ベッドが欲しい!枕が欲しい!もふもふに囲まれたい!


 はぁ…はぁ…はぁ…ふぅー」


 ひとしきり叫んだら、なんか気落ち着いたかも


 はぁーベッドに入って寝たい…


 なんで私いきなりこんな目にあってんだろう


 寝てただけなのに、二度寝してただけなのに…




 大分落ち着いた私は周りを見回すと廊下のような道の真ん中に座っていた


 壁にはロウソクのランプが張り付いているが薄暗い




 ゲームのダンジョンみたい


 なんか、逆にワクワクしてきたな


 いや、逞しいか私!


 一人でツッコむほど虚しいものは無い


 はぁー歩くか…




 拗ねながらも歩き出した私はまだ知らない


 今後もふもふに囲まれる人生を送れることを…


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