第二章

第6話 もくず屋のフィッツ



 今にも店をたたんでしまいそうな店名だけど、もくず屋にはよく足を運ぶことが多い。


「いらっしゃいませっ、オルタさんキャロさん!」

「おう、あいかわらずぼろいままだな」

「ちょっとオルタ」


 店番兼店長のフィッツ・ブルーミストラル。フィーが顔を覗かせて挨拶すると、オルタが歯に衣を着せぬ言葉を放った。

 私はさすがに肘で小突いた。


 そして小声で窘める。


「もうちょっと言葉を選びなさいよね」

「あ、悪ぃ、つい思った事が口に出ちまうんだよな」

「それも、フォローになってないわよ」


 喋れば喋るだけ墓穴を掘りそうなので、黙っていた方が良いかもしれない。

 オルタは静かにしていた方が得なのよね。

 顔はそれなりにいいし、体格もまあ……いいし。

 でも精神構造がお子様だから。

 はぁ……。


 それにしてもこの店、いつもどこか壊れかけだけど、修理したりしないのかしら。

 フィー以外の人、見かけないし。

 家族とかどうしてるんだろう。


 そんな事考えてたら、フィーがこっちを見つめて笑っていた。


「くすくす、お二人はいつも仲が良いですね」

「そうかぁ?」


 笑い声をもらすフィーに、オルタは納得いかないような顔。


 小うるさい小姑みたいなやつとでも思っているんだろうか。私の事。


「ほら、無駄口叩いてないで、さっさと商品見てくわよ。この後は予定があるでしょ?」

「おっ、そうだったな。早く行かないとどやされちまう。長居できなくて悪いなフィッツ」

「いいえ、顔を出してくれるだけで嬉しいです」


 お店の中に並べられた商品を見てく。


 前に見て行った時にはなかった新商品がいくつか入荷されていた様だ。


 今にも潰れちゃうそうな見かけしてるのに、商品の入荷はマメにされているみたい。


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