第8話

 街にあるコンサートホールの小ホールはほぼ満席であった。最後の曲のエンディングを、彼らは引き伸ばせるだけ引き伸ばした。太郎は一定の時間の中で、できる限りの数のリズムを打ち続けた。正はハイフラットを極限まで使って、ドラムのリズムに合わせてキーコードにあった音をできる限り多く鳴らした。亜香里は88鍵の端から端まで両手を滑るように動かしながら、キーコードの音をできるだけ多く鳴らした。裕一はキーコードの中でその瞬間浮かんだメロディーを、できる限りの速さで弾き鳴らした。一斉に最後のエンディングの音を打ち鳴らした。ものすごい拍手喝采が続いた。それは止むことなくますます激しいものとなっていった。あちらこちらからアンコールの声が聞こえ始めた。一旦ステージからステージの袖の中へと消えていった4人は、再びステージの袖から姿を現した。彼らの姿がステージに現れたのをみると、観客席はすぐに静かになっていった。エレキ・ギターを首にさげながら裕一がスタンドマイクを両手で掴んだ。

「みなさん、今日は本当にありがとうございます。みなさんが長い間応援してくださったので、今日単独のライブコンサートを行うことが出来ました。本当に何とお礼を言ったらいいのかわかりません。本当にありがとうございます。みなさんのお陰でCDを出すこともできました。今からアンコールの曲として、最近出来たばかりのオリジナルの曲を演奏します。『君への思い』という曲です。では聞いてください」

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