198坂 おかしいな

 ガララ──────────。




 ブタがスケボーにのって坂道をおりていった。


 今日、十匹目だ。


 毎日ここでいろんな姿をしたブタを見続けている俺。


 たしか二十五歳で仕事へ行ってた気がするが、どうだったかな。


 腹も減らないし、飽きもしない。


 ただただ、ぼ~~としてる。


 でもなんとなく、大事なことを忘れてる気がするんだが、思い出せない。


 て。


 あれ。


 坂をのぼってきてるの。


 親父にお袋じゃないか。


 黒い服を着て表情は暗いが、間違いない。


 しかもその手には花束と俺の好きなビールにカステラの包みがある。


 雰囲気から法事に向かうような感じだが、おかしいな。


 この距離で俺に気づいてないようだ。


 明るい性格の二人だから、見かければ必ず声をかけてくるのに。


「……」


 もしかして、俺が見えない?


 俺が見えなくて、黒い服を着て、花束や俺の好きなものを持っているってことは、もしかして俺、ここで──。

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