第3話

今まで聞いたことのない素晴らしい音楽が聞こえる。何の楽器だろう。聞いたことのないような音だ。今までこんな素晴らしい音を聞いたことがない。この世界でこんなにも美しい響きの音があっただろうか。どんな楽器からこんなにも美しい音がでているのだろうか。でもそれは間違いなくピアノから出ている響きであった。目を開けるとカーテンの隙間から漏れてくる眩い光が、今のが、夢であることを教えてくれた。何と美しい音楽だったろうか。でもその同じ音楽が部屋の外から聞こえてくる。ドアを開けると向かい側の兄の部屋は、ドアは開けっぱなしになっていて、兄はいなかった。その音楽は下のピアノの部屋から聞こえてくるものであった。僕は階下を降りてピアノの部屋の前まで来た。ガラス張りのドア越しから兄のピアノを弾いている姿が見えた。何と美しい響きなんだろう。今まで聞いたことのない曲だ。誰が作曲した何という曲だろうか。でもそんなことを考えていたのはほんの一瞬で、その曲の美しさに体全体が共鳴してしまい、僕の意識すべてはこの曲に陶酔してしまった。

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