戦隊のブラックですが、ヒーローをクビになったので怪人になります
村田のりひで@魔法少女戦隊コミカライズ決
武神戦隊 アームズブレイヴァー
何時もの日常、誰しもがそんな今日を過ごすと思っていた。学校へ行く子供達、会社にて働く大人、何の変哲もない日常はふとした拍子に崩壊する。
街に響き渡るのは悲鳴と喧騒。人々が、街が破壊されていく。
その中心にいるのは一体の異形だ。例えるなら魚人。ヒレのような耳、大きく虚ろな瞳、青白い鱗のある肌。上半身は裸に腰には割れた卵のようなバックルのベルトを巻いている。
「やれぇ!」
魚人の号令に赤黒いロボット達が街を破壊する。外装の無い中身が剥き出しの細い骸骨とも見えるロボット兵士達が斧を振るい暴れ回る。逃げようとする車に斧を投げ転倒させ、コンビニのガラスを破り人々を襲う。
逃げ惑う人々を魚人は嘲笑い蹂躙する。
「フハハハハ! 脆弱な人間どもめ。我ら
「そこまでだ!」
高笑いをする魚人の前に誰かが割って入る。
五人の男女、サングラスで顔を隠しているがおそらく高校生くらいの若者だ。先程の声も先頭に立つ茶髪の少年が発したのだろう、サングラス越しにもわかる端正な顔立ちをした美少年が威勢よく啖呵を切る。
「来たなぁ……。今日こそ貴様らの最期だ!」
「そうはいくか。お前ら毘異崇党の好きにはさせない! みんな、変身だ!」
「「「「応!」」」」
三人の少女、一人の少年が強く応える。五人は左腕の腕時計を正面に構える。
「「「「「アームド・オン!!!」」」」」
『『『『『バトルフォーム、アームズブレイヴァー』』』』』
それぞれが武器の描かれた鍵を腕時計に刺した。すると彼らの身体を囲むように光の輪が展開し、そこからヘルメットと各部を保護する鎧が浮かび上がり装着され全身をカラフルなスーツに包む。
口元が露出したヘルメット、肩等の間接や腰周りを保護する鎧。女性メンバーは髪が露出しかぜになびく。
「炎の勇士、アームズレッド!」
先頭を立つ茶髪の少年が叫ぶ。
「水の勇士、アームズブルー……」
ポニーテールの少女がレッドの右側に立つ。
「森の勇士、アームズグリーン!」
五人の中で一番小柄な少女は左側に。
「氷の勇士、アームズホワイト!」
長いストレートヘアの少女はグリーンの隣に。
「大地の勇士、アームズブラック!」
そして最後の一人、この中で二人目の男性メンバーである少年はブルーの隣に立つ。
「武神戦隊!」
レッドの声に続き、彼を中心に四人がポーズをとった。
「「「「「アームズブレイヴァー!!!」」」」」
世界を守る戦士が、人々の希望の光が姿を現した。逃げていた人々は足を止め彼らに声援を送る。
「今日こそ奴らを血祭りに上げるのだ。行けぃ!」
魚人の号令にロボット兵が一斉に襲い掛かり、アームズブレイヴァーの五人も立ち向かう。腕時計の画面を押すとそこから光が溢れ形を作ると各々の武器となった。
レッドは刀、ブルーは十文字槍、グリーンは身の丈はあろう戦鎚、ホワイトは火縄銃に似た形状のライフル、そしてブラックは弓、それも上部の鳥打に刃物が取り付けられた物が握られていた。
彼がロボット兵の群に突っ込んだ瞬間、機械の人形は空を舞う。
炎を纏った刃に両断され、突きと同時に噴射した水に突飛ばされる。グリーンが鎚を振るえば形すら残さず潰され、数に任せて囲もうとするもホワイトに撃ち抜かれる。
その中で一人、ブラックだけは四苦八苦しながらロボット兵を倒していく。他のメンバーが一撃で蹴散らしていくのに、ブラックだけは何発も矢を撃ち込みようやく倒せている。
彼の実力は他のメンバーに比べ明らかに劣っていた。
「次っ!」
だがブラックは必死に戦った。他のメンバーのように、アームズブレイヴァーが来て逃げるのを止めた周囲の人々を気に掛けながら、巻き込まれないよう細心の注意を払いながら一体ずつ倒していく。
そんな中、一人の子供がこちらに駆け寄ってくる。ヒーローを間近にし興奮しているのか、母親の制止を振り切り声援を送っている。
不幸な事に一体のロボット兵が子供に気づいてしまった。
「危ない!」
咄嗟に飛び出すと、間に割り込み振り下ろした斧を受け止める。
「くっ……君、早く逃げるんだ!」
流石にロボット兵には驚いているのだろう。腰を抜かしてしまい動けないようだ。
「ああもう! やるしかないか!」
ならばこの場で倒す。
斧を押し退けバランスを崩した所を連続で切り付ける。火花が散り装甲を削りながら蹴りも交えて圧していく。しかし決定打には至らない。
ジリ貧かと思ったその瞬間……
「はっ!」
ロボット兵を背後から炎の刃が両断する。
「大丈夫かブラック」
「レッド。すまない、助かった」
レッドの救援にホッと胸を撫で下ろす。そして彼の姿を見た子供は目を輝かせた。
「ありがとうレッド!」
「フフ。ここは危ないからお母さんの所にね? さっ」
「うん!」
慌てて駆け付けた母親に子供を渡すと、彼女は一礼し離れて行く。その背を見送りながらブラックは小さくため息をついた。
「相変わらずの人気だな。レッドが来た瞬間、眼の色が変わったぞ。俺なんか……」
「そう卑屈になるな。先に救助に行ったのはブラックだろ。それにお母さんもお前に頭を下げてたぜ」
「……そうだな」
「よし、残りも片付けるぞ」
二人が戦域に戻るとロボット兵は全滅、残るは魚人ただ一人。
相手も分が悪いのを察してか冷や汗を流すも、彼が戦う意思を捨てはしなかった。
「またまだ! 俺には……!」
何処からともなく取り出した三股の槍を構え突撃。五人も迎え撃つ。
ブルーが優れた槍捌きで受け流し、その好きにホワイトとブラックの射撃が直撃する。更にグリーンの鎚が魚人を打ち上げ、レッドの斬撃で火だるまになりながら吹っ飛ぶ。
反撃を許さぬ連撃。完璧なチームワークだ。
「よし、今だ!」
五人は各々の武器を一つにまとめ上げる。グリーンの鎚とホワイトの銃が本体に、レッドの刀とブルーの槍、ブラックの弓で銃身を組み上げた。
「「「「「ブレイヴァーキャノン!!!」」」」」
完成した大砲を四人で支え、グリップをレッドが握る。
五人の必殺武器、ブレイヴァーキャノンが魚人に向けられた。
「………………っ。ぐ、お……おあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
怯み一歩後退る。しかし意を決したように雄叫びを上げ、槍を捨てて真っ直ぐ走り出した。
「シュート!」
回避も防御も捨てた特攻。レッドは正面から迎え撃ち引き金を引いた。
銃身から赤、青、緑、白、黒の光が螺旋を描き放たれる。光の奔流は一瞬にして魚人を飲み込んだ。
「う……ああ…………」
悲痛な断末魔を残し、倒れたのと同時に爆散した。
人々の歓声を背に、アームズブレイヴァーの五人は勝利を、平和を取り戻したのだ。
これが彼らの日常。世界の平和を守る為、己の命を懸けて戦う勇者達。それが武神諸隊、アームズブレイヴァー。地球征服を企む異世界からの侵略者、毘異崇党を完全に打ち倒すその日まで。戦いの日々は続く。
そう思っていた。
「ブラック。君は本日をもって解雇となる」
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