once again~シャッターチャンスをもう一度~

だい

プロローグ 「once again」

 もしもあの時こうしていれば、なんて思うことは人生で何度も何度も経験する。でも、本当にあの時の選択は間違いだったのか、違う選択をしていれば明るい未来が待っていたのだろうか。


 それは何の前ぶれもなく、突然の出来事だった。


中学校3年の冬。学校からの帰り道。バス停で大好きだった片想いの相手から告白されたのだ。


「もし…もし私が裕輔のこと好きって言ったら…どうする?」


 すっかりテンパってしまった僕はある理由から、はっきりとした返事をしないまま、その場から逃げ出した。



 意気地無しの当時の僕はその後、卒業するまでこの話題に触れることも、自分から告白することも無かった。


本当に意気地無しの僕は、もう一度ちゃんと返事を聞きたいと、彼女から言われるのを待ち続けた。

その時はチャンスを逃さないようにと、空想の中で何度もシミュレーションした。次こそは、僕も好きだと言おう。絶対に次こそは。



 当時住んでいたのは、中学校の同級生の9割以上がそのまま地元の高校に進学するという田舎町だったので、誰がどこの高校を受験するかなんて誰も話題にしなかった。みんな、卒業しても通う学校の場所と先生が変わるだけ、みたいな感覚だったのだ。だから、高校でも彼女と同じクラスになれたらいいな、などと呑気に考えていた。

 彼女が違う高校に行ったことは、入学式の日に初めて知った。


 もしもあの時逃げなかったら、もしもあの時きちんと自分の気持ちを話せていたなら、もしもあの時付き合うことになったら、彼女は今も僕の隣にいてくれただろうか。

 もしも、もう一度チャンスがあったら。もしも、もしも…。


 人生とは後悔と失敗の積み重ねなんだと思う。

そして、自分から動かなければ同じチャンスは2度とやってこない。10代でそんなことに気づいてしまった僕だけど、それでもその後数年間は気持ちを伝えられなかった初恋をズルズルと引きずってしまうのだった。何か行動を起こすことも無く、かといってスッパリ諦めるでもなく…


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