第25話 小さな出来事
Y子さんは人の家なのにもかかわらず、ぐっすりと眠ってしまっていた。気が付いたらご飯の炊ける香りが、部屋中に充満していた。
商店街の中なので、小さな窓から朝の光が一軒家のように差すことはないのだが、かなり日が高く昇っているだろうと、感じることは出来た。
「昨日はありがとうございました。朝食をどうぞ。私、もうすぐしたら、予約のお客さんがみえるので」
「ああ、どうもありがとう」
Y子さんはちょっと焼きすぎた感のある目玉焼きを食べて、占い師が、昨日より普通な感じでいることに気が付いた。
「あの、本当にありがとうございました。何だか久々にすっきりした気分で」
「そう、それは良かった」
「毛布のお金、おいくらでしょうか? 」
「いいのよ、それはクリスマスプレゼントに」
「クリスマスプレゼント・・・わあ・・・何年ぶりだろう」
「そうね、そういえば私も・・・」
楽しい食卓だったが、占い師の仕事のためY子さんは家に帰ることにした。
「それじゃ、あ! ごめんなさい! 」
狭い家の中、Y子さんは緑色のカツラをちょっと踏んでしまった。
「あ・・・私がそこに置いていたので、気になさらないでください」
そのあと店を出たのだが、何故かこの小さな出来事がY子さんの頭から離れなかった。
「霊・・・だとしたら・・・この世に未練があるから出てきているんでしょうね」
家に帰って調べることにした。
「コンサートに行く直前だったんだ・・・・・」
大好きなアイドルのコンサートチケットをやっと入手し、その当日に起こったあまりにも悲しい交通事故だった。Y子さんはこのことを調べてから、事故現場に向かった。
「お花が供えてある、クリスマスカードも」
十代の女の子にふさわしいものであったが、それが尚更この世の不条理を倍増させた。
Y子さんはその場にしゃがみ
「私と同じ町に住んでいたのに、こうやって手をあわせることもしてなかった、ごめんなさいね」
謝りながら、考えていた。
「私は霊がみえないし、彼女のために何か出来ることもない・・・
いや、もしかしたら・・・・」
もう一度Y子さんは急いで家に戻った。
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