本編
第1話 失敗
私はバ美肉と偽った。
以前から憧れていたVtuberになろうと決意した私は、彼女らに付き纏う厄介なガチ恋勢がいる事を知っていた。
自惚かもしれないが私もVtuberになる以上もしかしたらそのような輩が湧いてしまうのでは無いかと警戒をする。
イラストが好きで昔から描いてたこともあり、ガワは自分で用意しようとペンを走らせつつガチ恋勢を沸かさないようにするにはどうすれば良いかと考えていると、ふと一つの案が思いつく。
ガワを描き終え、数日前に届いたマイクの入った段ボールを開き、wedカメラ名前でウインクしてみる。
スゥーと息をして初投稿のための自己紹介動画を撮影する。
「悠久の時を生きる神様系バ美肉Vtuber
愛嬌をふりまいた甘ったるい声で言葉を切り出す。
自分の中で一番可愛いと自負している声を出すが、バ美肉だと宣言したので大丈夫だと高を括る。
このまま可愛いおじさんとしての地位を勝ち取り、たくさんのリスナーとお話する自分の姿を想像して私の頬は緩んだ。
この作戦が失敗するとは思っていない愚かな私は……
―――――――――――――――――――――――
「こんばんはー! お仕事、学校があった人はお疲れ様。悠久の時を生きる神様系バ美肉Vtuber神原とわだよ。みんなももうわかってると思うけど、なんと! チャンネル登録者数が千人を超えて生放送ができるようになりましたー」
:おー!
:8888888
:待ってたー
:早かった
:おめでとう
Vtuberとして動画を投稿し続けてはや一ヶ月、ついに私は一つの目標である生放送を始めることができた。
流れるチャットはそこまで早く無いもののその一つ一つが私の事を応援してくれており、いつもコメント欄にいる人、ここで初めてみる人、その全てが温かく感じ、自然と目頭が熱くなる。
「ここまで応援してくれてありがとう。 今日から生配信も頑張るから、これからもとわの事見守ってください」
:当たり前だよなぁ
:応援しないわけがない
:どこまでもついて行くぜ
反応される言葉の一つ一つが嬉しくこのまま終わりたくないとさえ思ってしまう。
しかし時間は残酷なもので、集まったリスナー百人程と雑談を続けていたらあっという間に二時間が経っていた。
「もうこんな時間! じゃあ次回は明後日に配信しようと考えているよ。じゃあまたねー」
:おつ
:またねー
:楽しかった
手を軽く振りながら配信終了のボタンをクリックする。
あぁ楽しかったなぁと、フワフワした頭を引き締めるように椅子に体を預けて腕を伸ばした。
その時スマホの通知がなっていたことに気づかずに……
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