黒崎永遠の事件簿

MiYu

第1話 黒崎永遠

ピピピッピピピッ

「んー・・・」

ピピピッ

「うるさい・・・」

ピピ

カチッ

「ふぁぁぁ~朝か」

トタトタトタ・・・ガチャ

「おはよ~」

「おはよう永遠」

「おう、起きたか」

「はぁ・・・」

「どうかしらのか?」

「そうね。溜息なんて」

「あのね、私は今中学生よ。いわゆる思春期。それなのに親がそんな格好してたら溜息もつくわよ」

「「へ?」」




私こと黒崎永遠は13歳。中学一年生である。入学して一カ月経ったがまだ慣れないものである。部活はパパがバスケをやってたからその影響でバスケ部に入部している。先に言っておくが私はこの二人の娘で良かったと思っている。両親を誇りにも思っているだが・・・




「なんで二人とも裸なのよ!!」

「てへっ」

「ああもう可愛い!じゃない!!服を着て!!」

「はーい」

「じゃあ俺も服を着るか」

「パパは思春期の娘がいることを自覚しろ!!私じゃなかったらもう口を利かないレベルだよ!!」

「でも永遠は口を利いてくれるだろ?」

「むぅ・・・。ああ言えばこう言う・・・」

「大人ってそんなもんだ」

「そうねー」

「嫌な大人だな!!」

「ほら騒いでたら遅れちゃうよ」

「そうだぞ」

「あっ、本当だ!急いで準備しなきゃ!」

「ご飯は出来てるからな~」

「うん!ありがとう!!」







「じゃあ行ってきます」

「はーい」

「行ってらっしゃい」

「パパ」

「ん?」

「行ってきますのキスして」

「永遠は俺の娘だぞ?」

「そうだね。私はパパの娘ね」

「じゃあなんでそんな事頼むのかな?」

「好きだからかな」

「あら?悠、浮気かしら?」

「なあ燈花?お前の目には何が映ってるんだ?」

「夫と娘が浮気してる所?」

「浮気の条件満たして無いんじゃないでしょうか!?」

「そうだよママ。パパは私のだから」

「何を言ってるのかな?この薬指にはめてるのが見えないのかな?」

「そういえば、昨日の夜パパはその薬指にはめてるやつ外してたよ」

「は!?」

「あら悠、話し合いが必要みたいね」

「ちょっと待って!!」

「じゃあ行ってくるねー」

「おい!!」

バタンッ




通学路にて

「良いなー。パパみたいな人と結婚したいな」

『そうなのか?』

「ティターニア、そんなほいほい出てこないの」

『馬鹿には見えない存在だから良いんだよ』

「妖精ってそんなにフワフワしてるの?」

『見ての通りだが・・・』

「物理的にフワフワしてるって話じゃないの!存在そのものがフワフワしてるって話なの!!」

『ああ、安心しろお前にしか見えてはいない』

「だから周りから見ると私はおかしな人に見えるの!」

『そんな事で文句言ってたのか。困ったものだ』

「やってらんないよ・・・」

『というか話を戻すが、お前は黒崎悠みたいな人と付き合いたいのか?』

「まあ理想よね。だってあの美人なママがあそこまで好きって言ってるのよ。パパは正直顔は良い方では無いけど、愛する者の為だったら命を懸けられるような人なんだよ。そんな所にママは惹かれたと思うし、私もそんな人を好きになりたいの」

『だからあの男と?』

「うん、パパを超える人が居るかは分からないけど結婚するとしたらパパとかな」

『法律って知ってるか?』

「知ってるよ。だから籍は入れないわ。そうね愛人とか」

『あいつも困ったもんだな』





学校

教室にて

ガララララ

(はぁ・・・。面白くないなぁ。家に帰りたい。授業もつまらないしなぁ。バスケだけやって帰りたい)

ガヤガヤ・・・

(友達いないのはやっぱおかしいのかなぁ)

キーンコーンカーンコーン

(はぁ・・・。やる気でない)

「はーい。席につけ。欠席はいないな。連絡事項なんだが、最近生徒の間で変なおまじないが流行っているようだな。信じるのは勝手だがのめり込むなよ。以上だ」

(おまじないかぁ)







キーンコーンカーンコーン

「ふぁぁぁ~」

(やっと放課後だぁ・・・。部活に行くか。正直、周りには煙たがられる気がするけど)









部活後

部室にて

「今日も疲れたなぁ・・・」

(主に人間関係で・・・。どうして先輩たちってあんなに真面目にやらないのかなぁ・・・)

「やめようかな・・・」

(まあパパとママに相談してみようかな)

「あっ、数学のノート忘れた」




教室にて

「おお、開いてた。ノートはっと・・・」

タッタッタッタッ・・・

「ん?足音?」

タッタッタッタッ・・・

「怖いなぁ」

タッタッタッタッ・・・

助けて・・・

「何か聞こえた・・・。ティターニア」

『どうやら異質な気配がするな』

「危険かなぁ」

『お前なら大丈夫だ。ユグドラシルの力を黒崎悠から引き継いでる上に、妖精王の私がついている』

「まあそうだけど・・・」

『しかもバスケ部なのに足技が得意なんてな』

「だってパパとママがその手は誰かに手を差し伸べるためにあるから、暴力で汚すなってのが教えだし」

『ふっ、そうだな。それじゃあ行くか?』

「うん」



ガララララ・・・

「あの~助けてって聞こえたんですけど~」

『それで出てくると思うのか?』

「さあね~」

『本当に親子だな』

「誰か~いないんですかぁ~。いないなら私帰りますよ~」

『出てこないなら良いんじゃないんか?』

「じゃあ帰るかぁ」

『そうだな』



「あの!」

「ん?」

『誰か居たようだな』

「あなたは人間ですか?」

「うーん、話がややこしくなりそうだから人間って答えておこうかな」

「あの・・・助けてください」

「どうしたの?」

「実はこっくりさんを友達とやったら、現れたんですよ」

「何が?」

「幽霊がです。それで怖くて逃げだしたんです」

「ん?友達は?」

「友達も逃げたはずなんですけど・・・」

「一緒には逃げなかったのね」

「うん・・・」

「なるほどね。それであなたはどうしたいの?」

「助けて欲しい・・・」

「それはあなたを?」

「友達を助けて欲しい」

「そっか。分かったわ」

「助けてくれるの?」

「うん良いよ。でもこれだけは確認させて」

「な、何・・・」

「あなたはその友達を助けるためだったら命賭けられる?」

「え?」

「だから友達を助けるためにはあなたの命を犠牲にできるかって聞いているの」

「それは・・・」

「うん大体わかったわ。あなたは帰って良いわよ」

「でも」

「良いから帰って」

「うん・・・」




『良かったのか?』

「私、ああいったのは嫌いなのよ。何の覚悟も無いくせに怪異に手を出して友達を置いて逃げ出すって、モブ以下じゃないの」

『手厳しい意見だな』

「そう?私自身はあまり分からないわ」

『でもお前らしいよ』

「なら良いじゃん。さて行こうかしらね」

『でもやるんだな』

「明日学校に来たら死者が出ましたってやばいでしょ」

『そうだな』

「ってことでティターニア。よろしくね」

『はいはい。よいしょっと』

シュゥゥゥ

ティターニアは昔、パパとママが仕事中に面倒を見た間柄で、私に力を貸してくれる。

そしてその力は黒崎永遠の武器にもなれる。

基本的にはサイハイブーツのような形状に変化し、蹴りの威力を増幅させ幽霊や怪異をも倒せる威力となっている。

「うん良い感じね。流石ティターニアね」

『お前の力とユグドラシルの力を最大限に引き出すのが私の役目だからな。今のこの状態みたいにブーツにもなんにでもなってやるさ』

「サイハイブーツって私好きなのよねぇ」

『まあお前のイメージで私は変化してるからな。お前次第で強くも弱くもなることは忘れるなよ』

「分かっているわよ。いつも心配ありがとうね」

『心配なんかしてない。お前に何かあったらあの二人に殺される』

「そうだよ。だから私を守ってね」

『良いだろう』






コツコツ・・・

『ここから異質な空気を感じる』

「理科室か。またオーソドックスだね」

『そうだな。じゃあ乗り込むか?』

「そうしよっか」

ガララララ!!

「すみませーん!!誰か居ますかー?」

ドンッ!

「おお怖いなぁ」

『なんだ、こっくりさんと思ったらただの幽霊じゃないか』

「そうだね。ただなんかキモいけど」

『悪霊がさまよい続けると人の形すら保たなくなるからな。まあだいぶさまよったのだろう』

「死神には仕事して欲しいわね」

ドンッ!

アアアアアアアア!!!!

「お怒りみたいね」

『そうだな』

「早く片付けないとパパとママが心配するわね」

『だな。とっとと終わらせるぞ』

コツコツコツコツ

ヒュッ

ドゴッ!!

「今のは顎に入ったわね」

『ああ、いい感触だ』

アアアアアアアア!!

「もう一回!!」

ドスッ!!

「最後にサマーソルト!!」

ゴスッ!!

カツンッ

「決まったわね」

『お前な。スカートなんだから少しは我慢しろよ』

「戦う女子って萌えない?」

『知るか』

「えー」

アアア・・・

「何?まだ生きてたの?はぁ・・・ふんっ!!」

グシャッ

「というかあのお友達とやらはどこに行ったのかな」

『さあな』

「居ないなら本当に帰れば良かった」

『そうだな』

「あっ、もう元に戻って良いわよ」

『ああ』

シュゥゥゥーッ

「うん、ありがとう」

『気にするな』

「じゃあ帰ろうか」

『だな』




帰り道にて

「でも何だったんだろうなぁ」

『さっきの事か?』

「うん。こっくりさんなのに幽霊だったり、友達とやらは居ないし・・・。おかしくない?」

『まあおかしいな。でもこっくりさんなのにただの幽霊が出てるのは割と簡単に説明出来るぞ』

「そうなの?」

『ああ。幽霊ってやつは幽霊らしい事をやりたいんだよ』

「なるほどね。髪の長い女性は貞子の真似をしたり、お化け屋敷でエキストラに紛れて本物の霊が登場みたいな」

『そうだ。他にも色々、幽霊という立場で色々やってたりするぞ』

「死んでも元気ね」

『今回の霊はただの悪霊だったけどな。もう人の形をとどめてないほどの霊だ。よくあんな化け物を降霊させたものだ』

「何か裏がありそうね」

『なあ永遠』

「なに?」

『怪異は自分から触れに行くものでは無いってことを忘れるなよ』

「分かってるわよ。だから今回もあそこまで渋ったの」

『あの友達のくだりか?』

「うん。助けを呼んでいる時から信用はしてなかったから」

『そうだったのか?』

「なんか命を感じなかったの」

『流石はユグドラシルの力を持っているだけあるな』

「うん。パパもだけど生物の生命力を察知するのは得意だから」

『お前はあれを何だと思う?』

「人形か、幻覚か」

『なるほどな。幻覚だとお前には効かないだろうから人形なんだろうな。それも本物の人間の身体を使ったな』

「気持ち悪いね」

『この学校に居ると思うと気持ち悪いな』

「パパとママに相談してみようかな」




黒崎家にて

「た、ただいま・・・」

「遅い!!何をしてたの!!」

「ごめんなさい」

ぎゅっ

「心配したのよ」

「ごめんね。ママが心配するのは分かってたのに遅くなって」

「それで何があったの?」

「悪霊と戦ってた」

「やっぱりそうなのね」

「パパは?」

「悠なら今調べもので外に出てるの」

「調べもの?」

「うん。もうじき帰って来るんじゃない?」



ガチャ

「ただいま~」

「お帰り悠」

「お帰りパパ」

「2人とも出迎えてくれたのか嬉しいぞ」

「たまたまよ」

「そうだね」

「そこは頑張ってごまかそうよ。出迎えたって嘘で良いじゃん」

「悠は嘘は嫌いでしょ」

「私も嘘嫌い~」

「うちの姫様方は面倒な性格をしていらっしゃいますね」

「悠もでしょ」

「パパもだよ」

「それじゃあみんな帰ってきたことだしご飯にしましょう」

「うん!」

「そうだな。ちなみに今日は何なんだ?」

「今日はかつ丼と茶碗蒸し作ってみました~」

「時間がかかるものを作ったね」

「すまないな。任せてしまって」

「私は愛する人たちが幸せになれならこのくらい大丈夫よ」






「じゃあ」

「「「いただきます」」」

モグモグ・・・

「美味しい」

「流石燈花だ」

「へへへ~」

モグモグ・・・

「そういえばさ。今日学校で悪霊と戦ったんだけどね」

「さっきも言ってたわね」

「ん?そうなのか?」

「うん。部活終わった後にね、教室に忘れ物したから取り入ったんだけどね。そしたら助けを呼ぶ声がしたから行ったら、友達とこっくりさんをしてたらその霊が出てきて怖くて逃げだしたって言うの。だからその霊を退治したの」

「流石は私たちの娘ね」

「なんか巻き込まれ体質なのは本当にごめんな」

「パパたちのせいじゃないよ。私は二人が親で嬉しいもん」

「永遠は良い子ね」

「なんか大人だな」

「でしょ。だからねパパと結婚するの」

「いや話がよく分からない方向に」

「あらあら悠?浮気かな?」

「このくだり朝もやったよね!!」

「まったくパパはこれだから」

「何!?これだから何なの!?」

「ふふふ、今日は寝かさないよ」

「ふぇ~」





「あっ、永遠。ティターニアはどうしてる?」

「ん?今は寝てるよ。疲れちゃったみたい」

「そうか。まああいつは絶対にお前の力になってくれるからな」

「うん!でもどうしてティターニアは私に力を貸してくれるの?」

「あいつはユグのおかげで生きていられるみたいだからな。だから俺の中に生きているユグと永遠に宿っている力の一部がある限り俺たちの味方だ」

「そうなのね」

「でも単純に永遠の事を気に入ってるみたいだぞ」

「なんかそうみたいだね」

「あと学校はどうだ?」

「急にお父さん感がある会話になったね」

「いやお父さんだからね」

「相変わらず友達はいないよ」

「誇らしく言う事か?」

「だって仕方ないじゃん。何というか自分の事しか考えてない奴ばっかりで」

「そうか。まあいずれお前を分かってくれる人も現れるだろうな」

「そうかな~」

「ああそうだ」

「あとさ、パパに相談なんだけど」

「結婚以外だったら相談にのるぞ」

「部活辞めたいの」

「本気か?」

「うん」

「じゃあ止めない」

「え?」

「本気でやりたくないって思うならやめてもいいぞ。無理をする方がおかしいからな」

「うん。あのねバスケは好きだよ。でも部が嫌いでね。やめようと思う」

「そっか。じゃあ仕方ないな。先生に言って辞めさせてもらえ」

「うん。分かった。でもなんか意外」

「何が?」

「だって止められるかと思ったもん」

「お前が正しいと思ったなら俺は止めない」

「なんかパパって変わってる」

「そうだろう。俺は普通が嫌いだからな」

「ふふふ、やっぱり自慢のパパだ」

「それなら良かった。ほら先にお風呂入っておいで」

「うん!」




「良いパパやってるじゃないの。悠」

「燈花だって良いママやれてるぞ」

「ねぇ、今日シない?」

「良いよ」

「今日も私がリードね」

「はいはい」




お風呂にて

「ふにゃぁ~」

『おい、永遠』

「どうしたの?」

『今日の助けを呼んだ奴の事を聞かなくて良いのか?』

「別にいいかな。私に直接的な被害があるんだったら徹底的に潰すし、私には何も害がないならどうもしないよ」

『お前が良いなら私も構わないが』

「ねぇティターニア」

『何だ?』

「どうしてあなたは私に力を貸してくれるの?」

『お前に惹かれたからだ』

「あら、他種族との恋愛は否定しないけど、私は男の人と付き合いたいかな」

『何でもかんでも恋愛に持っていくな。お前そのものに興味があるんだ。ユグドラシルの力を持ち、魔女の力もある。そんな奴の人生を見届けようと思っただけだ』

「ふ~ん。妖精王って暇なのね」

『言い方な。それに王も退屈でな、周りに対等で居てくれる奴はいなくてなこの家の者だけだ』

「まあうちは変わってるから」

『ふっ、そうみたいだな』

「ふにゃぁ~」







寝室にて

「明日も学校だし寝ようかな」

『ああ。私も寝るとしよう』

「さっきも寝てたじゃない」

『寝れるときに寝ておくのが私のポリシーだ』

「妖精王ってそれで良いの?」

『もう私の下僕はいないからな。自由だ。寝て食って生活するだけで良いんだ。幸せだ』

「ニート?」

『ちゃんとお前を守るという仕事をやっているだろう』

「ふふっ、確かにそうね」

『ほらもう寝ろ。私は眠い』

「うんお休み」

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