異世界転生最強勇者のステータスは年利20パーセントでした―借金返済に全力な俺はハーレムやら投獄やらで魔王倒してる場合じゃない―

くらんく

第一章 借金勇者

第1話 転生契約

「あなたは生前多くの者を助けました。その功績を称え、二度目の人生と最強のステータスを与えます。よろしいですね?」


 ここはどこだろう。頭の中で声がする。とても暖かく優しい声だ。周囲は真っ暗な闇の中なのに声のする方はとてもまぶしい。一体いつからここにいるのだろう。


「それでは15歳の覚醒の刻に力と記憶が解放されるよう運命付けました」


 15歳?今の俺は25歳のはずだ。大卒で入社した会社で3年目。ああ、思い出してきた。大きな地震で倒壊した瓦礫から大勢の人を運び出してそれから…。


「それからどうしたんだっけ…?」


 どうしても思い出せない。思い出そうとするとひどく頭が痛むのだ。


「それでは、行ってらっしゃいませ」


 少しも思い出せないが今の状況と先ほどの声。何となく想像はつく。


「俺は、死んだのか…」


「貴方はいま、生まれたんですよ」


 まぶしい光の中にぼんやりと姿を浮かべた人影の口元は微笑んでいるようだった。きっとあれが女神様なのだろう。生前の俺の行動が評価され、『蜘蛛の糸』よろしくもう一度チャンスを与えようとなったのだ。さしずめ俺はカンダタといった所か。


 とはいえ俺は罪人でもなければここは地獄でもない。俺は俺の新たな人生をしっかりと歩んでいこう。少しずつ周囲が輝き始め、体が浮かんでいく感覚。初めての体験に何年ぶりだろうか、子供のころのように気分が高揚した。


 この光景を目に焼き付けようとまわりを見渡すと、とある文字に目が留まった。


『転生斡旋業&消費者金融業で実績ナンバーワン』

『転生するならフューチャーグロースカンパニー』


「胡散臭いっ!!!」


 いったい何だここは!転生斡旋業!?聞いたことのない業種だし会社名が安直すぎてバカっぽい!このままじゃ面倒なことになるのは確実だ。


「すいません!いったんキャンセルでお願いします!!契約内容の再確認を!!!」


 必死に叫んだが時すでに遅く、体が粒子となって天へと吸い込まれていった。最後に女神と視線が交わったとき、彼女はニヤリとほくそ笑んでいた。


 やっぱりここは、地獄かもしれない。

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