アナザーエンド(旧版)

ソルティ

第1話 はじまりの記憶

■■■■年 ■■月 ■■日 春咲 夕莵(はるさき ゆうと)


「僕の方は順調だ!」


「こっちも準備万端です!」


耳に着けている片耳のワイヤレスイヤホンから二人の少女と少年の声が聞こえる。

もう作戦が始まるみたいだ...

今まで長いようで短い日々だったと思いながら、今までの出来事を振り返る。

初めは信じられなかった...今でも夢なんじゃないか?って少しは思う。


「こっちもいつでも大丈夫だ!さあ...はじめよう!」


俺はイヤホンを少し押さえながら、繋がっているみんなに向かってそう言った。

今からまたすべてが始まる...何故かそんな感じがした


【■■■前】

2021年 07月 28日 春咲 夕莵(はるさき ゆうと)


公園のベンチに座りながら近くの花を見る。

ノカンゾウ...花言葉は...


「悲しみを忘れるか」


そう軽く呟く

俺はずっとその悲しみを忘れられていない。

出来損ないでずっと何の才能もなく、生きてる意味すら感じない。

そんな俺が生きていて、あいつはもう居ない。



「夕莵くんどうしたの?大丈夫?元気なさそうだけど」


「ん?大丈夫」


「本当に?」


「うん!」


「なら良かった」


彼女の零夏(れいな)が俺に近づいて話しかける。

いつもこんな風に俺の心配をしてくれているが申し訳なく思う。


「公園で一緒に過ごすのも悪くないね」


零夏がそう言う。

現在、俺は零夏と近所の公園に来ていた


「もう15時だけどそろそろ帰る~??」


「うん」


零夏はいつも通り笑顔で俺に話しかける。

たぶん純粋な笑顔なのだろう

だけど俺はたまにこの笑顔が信じられなくなる。

いや、これ以上はダメだ

零夏は俺と今までたくさん話しかけてくれた

それなのにこんな事を考えてはダメだ。


「また何か考えてたー?」


「い、いや!何も考えてない」


「なら..信じるよ」


なぜか零夏はいつも俺が何を考えている事を知ってる。

勘って説明にするのは難しいほどに...


「とりあえず帰るか」


俺が一言、零夏に言うと少し頷き一緒に自宅まで歩いていく。


【自宅】


いつも通りの汚くも綺麗でも無いただの一つの一般的な部屋に入っていく。


「ねえ、最近は嫌な夢とか見ない?」


「まあ最近はあまり見ないよ」


部屋に入るとすぐに零花は話しかける。

実は少し前までは変な夢を見ていた...

誰かが目の前で死んで、それが全部なかったことになる夢を...


「ピローン♪」


零夏と話していると急にスマホの通知が来た。


「うさぎを探せ」


そう書いてあっただけのメッセージ...

それを見ただけなのに急に頭痛と目眩、それに何故か涙が出てきた。


「大丈夫?夕莵くん」


「大丈夫...」


大丈夫とは言ったが頭痛と涙は止まらない。


「うっ...」


急に吐きそうになる。

それと同時に目の前には見覚えのある人が現れた。

容姿は俺より3歳ほど下っぽくて、カラコンみたいな赤色の目にベレッタm93r(ハンドガンの銃)を左手に持っている

見た目は明らかに人間だ。

でもそれを死神だとなぜか思えた...


「お前はどっちに来るんだ?」


死神が俺に話しかけながら手を差し出す

どうなるか分からないが手を握ろうとした。

その瞬間、俺は倒れた


「僕が必ず君を救う!だから目流(める)!少しの間だけまっててほしい、何をしても...必ず別の未来を作り出すから!」


幻聴か?

少し高い少年ような声が少し聞こえた



「夕莵くん!大丈夫...?」


「あっ、ごめん...」


「もしかして寝てた?」


「ごめん、わからない...」


気がつくと零花が目の前に居た。

寝ていて夢でも見ていたのか?

それとも...さっきの死神は幻覚であの声も幻聴だったのか?

もしもそうなら明日にでも病院に行った方が良いだろう


「結局また一人か...」


あれ?俺は急に何を言っているんだ?

目の前には零花が居る...

この顔、性格、声はたしかに存在するはずだ。

とりあえず気分転換にゲームをしよう


「そんな状態でPC起動させても大丈夫なの?」


「危なくなったらすぐにやめる」


「無理はしないでね?」


零花はいつも俺に何かあると心配してくれる。

俺が何も言ってなくても頭痛とか目眩とか何故か全部知っている。


「心を読む能力でもあるのか?」


小さい声で呟いてしまった。

どうやら零花には近くで起動しているPCから聞こえてくる爆音のファンのお陰で俺の声が聞こえてなかったようだ


「良かった」


そう小さく呟きキーボードでPCのパスワードを打ち込み、enter(エンター)キーを勢いよく押す...


【■■時間後】


目をあける...

気がつくとどこか知らない場所立っていた


「え?」


思わずそう反応してしまう。

だけどこんな状況では誰でもこんな反応をすると思う、さっきまで家でパソコンを触っていたのに、目を開けると大きな交差点が見えたからだ。


「どこか調べないと」


ポケットを探り、スマホを手に取る。


「えっと...地図アプリは」


スマホのマップ機能を使ってこの場所を検索する。

そうすればすぐにこの場所がどこかわかるはずだ


「えっ!?」


そこに出てきた位置情報には東京の渋谷のスクランブル交差点と書いてあった。

俺はさっきまで兵庫県に居たはずだ

そしてここに来たことは当然、身に覚えがない


「夢なのか?いや、この感覚は現実のはず...

でももしも夢なら...好きな物が出せるはずだ!」


ベレッタm92fsを出そうとするが出せなかった

どうやら現実のようだ


「現実か...」


確証は無いが現実の可能性が高い...

信じられないがたぶん現実...


「そうだGPSがあった。

ここまでのルートを見よう」


スマホのマップから、ここまでのルートを探る。

そこにちゃんと俺が電車でここまで来たことが書いてあった。


「信じれない、一応周りを探索...」


一歩ずつ、ゆっくりと歩み出す。

「なぜここに居るのか」という疑問の正体を調べるために...


「うっ...」


歩いているとまた頭痛と目眩が俺を襲う。


「また君はここに来てくれた」

だから案内しよう...左にある道を真っ直ぐ道なりに進んでからまた右だ。」


道案内のようだ

でもここには誰も居ない

なのに声が聞こえる...明らかに俺がおかしくなっているんだ。

でも...一応探索する

そこに答えがあるかも知れないから...


【10分後】


意外と時間が掛ったが目的地らしく場所に到着した。

目的地はどうやら喫茶店?のようだ

当然、ここは行ったことがないはずだ。

でも何度か来たことがあるような気もする


「君は雪兜(ゆと)か?」


「え?」


女性の声が耳元で聞こえる。


「後ろを見て、もしかしたら思い出すかも」


言われた通りに背後を見る。

そこには白い髪に白いパーカー、下には学校の制服を着た少女が居た。


「どう?思い出した?」


「えっと...わからないです」


「うーん...じゃあもうひとつ質問!君はどうしてすべてを隠す?」


隠す?

隠すというのはどういうことだ?

疑問しか頭に出てこない


「とりあえずついてきてほしい。

君が考えているその理解不能を可能に変えるよ」



喫茶店


俺が少女について行った先は小さな喫茶店だった。


「ここで話がある」


「話?」


「うん、大切な話がある。主に君がここに来たことについてね」


ここに来たこと?

この少女は俺がここに来た理由がわかるのか?


「すいません。

ブラックコーヒーのホイップクリームましまし、砂糖多め、ミルクいっぱいで」


「はい。少々お待ちください」


俺が何も話さずにしていると少女は謎のメニューを注文する。

ラーメン屋の注文みたいだな...


「さあ、本題について話そう

私は君に勧誘...いやスカウトをしに来た」


「スカウト?」


「うん。君には探偵になってもらいたい


状況が理解できない

どうして俺なのか?その理由がわからない

それに今一瞬勧誘って...


「ちょっとまってほしい、さっき言っていた雪兜って誰ですか?俺は夕莵(ゆうと)ですよ」


「前にあなたと色々あったの覚えて無いの?」


「え?そんなの覚えてないですよ」


記憶がおかしいのか?それとも俺がおかしいのか?

すべてが理解できなくなる...


「あのー、さっきから思ってたんですけど...」




■■分後


気がつくと机の上には服のポケットに入れっぱなしで使っていないメモ帳の切れ端があった。

その切れ端には...


「俺はお前であり、お前は俺だ。もしも今の状況が理解できないのなら死神とうさぎを探せ」


そう書いていた。

意味がわからない..よくわからないメッセージに書いてあったうさぎと俺の妄想?で出てきた死神という言葉、なぜ今、この状況でここに書いてあるんだ?


「これは誰が書いたんですか?もしかしてあなた?」


「私じゃないよ、それを書いたのは君自身だ。」


訳がわからない。

俺が書いたのか?

もしもそうなら...考えられる可能性は2つだけだ...


「もう気づいているでしょ」


少し考えている間、少女は少しニヤっとした表情でそう言い、余裕という感じでゆっくりとコーヒーを飲んでいた。

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