たまり場
花空
優しく、柔らかく、切ない
放課後、なんとなく帰る気がしなくて校内をふらふらと歩いていた。
しばらくすると、人気がなく、屋上へ続く階段が目に入る。屋上は普段、使用禁止とされているからだろう。侘しい空気が漂っていた。
ポロロン、と優しいギターの弦を弾く音と共に、柔らかな歌声が聞こえる。
どこから、誰が。
そう思って音の鳴る場所へ近付くと、いつもは教室の端で本を読んでいる人。そして、僕が秘かに想いを寄せている君だった。
普段物静かな君が、ここまで綺麗な歌声を響かせるなんて、全く思いもしなかった。
歌詞や音に合わせて、表情が変わり、感情が揺れ動く。
君が今歌っているのは、恋愛ソング。そっと相手のことを見つめて、伝える気のない『好き』の気持ちを閉じ込めてる。そんな歌。
ねぇ、それは誰に向かって歌ってるの? 誰を想って歌ってるの?
そう考えていても、盗み聴きしている分際の僕が、素敵な歌を邪魔するような真似はできない。
ただ、気持ちを伝える意気地もない僕の恋愛は、ここで終わったんだなと。それだけを悟った。
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