11 落日
観覧車から降りたあと、かすみたちは集まって屋台のハンバーガーを食べると口にする。
一人離れたエージェントはメールにあったゴミ箱のなかから紙袋を取り出して、そこから鍵を入手し、コインロッカーに向かい、なかを見た。
一枚の紙。
そこにはマスターレギオンがFHの支部を利用し、ММ地区に向かっていることが書かれていた。
その紙を握りつぶし、エージェントは目を伏せる。
「マスター」
「なぁに、アリオン」
「本気なんですか」
「……愚かだと思う?」
「わりと」
笑ってアリオンは答える。
「けど、ずっと迷い続けていたときよりは覚悟が決まった顔してますね」
「……そうね」
ここにきて高見に問われ、かすみたちと触れ合って、今までわざと作ろうとしなかった絆を一つ、また一つ、作られていくのがわかる。
同時にそれを自分の手で壊そうとしているのも自覚している。
「私、あの少女が嫌いなのね。ううん、嫉妬してる。私も同じなのにあの子にはある、それが腹が立つ」
「……マスター」
「一体、私とあの女の子、なにが違うの? 道具であること、虐げられたこと、ああ、それとも……抗う力があることかしら?」
自分は戦う力があるから――本当はいつも震えて、逃げたいと思いながらも、戦えるから、誰も助けてくれない、守ってもらえない。
「もし、私にもっと特別な力があれば」
あの女の子のように可愛らしければ、治癒する力があれば――マスターレギオンは自分のことをもっと容易く受け止めてくれただろうか?
知りたくなった。
こんな気持ちは――マスターレギオンに対する気持ちを、彼のそばにいた少女に自分は途方もなく汚い気持ちを抱いてしまった。羨ましくて、妬ましくて、こんな汚い自分が死ぬほどに嫌いだ。
願えるなら、自分も、きれいになりたい。
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