ダブル・パースペクティブ

@samayouyoroi

第1話 コンサート

彗星に乗って貴方に会いに行こう

それがどんなに遠くても


貴方に会えたらやることは決まってる

私を放って行ってしまった事を思い出させてあげる


貴方に会えたらやることは決まってる

思いっきりビンタしてキスして抱きしめてあげる



サビの部分になると聴衆たちは声も音程も外れまくった大声で一斉に唱和し始めた。それにより舞台の彼女の声もかき消されているのだが、聴衆たちは何よりも彼女への親近感と共感をこそを求めているので、それはそれで良いのかも知れない。


栄光の劇場グローリー・シアターと言うには少々手狭で、歴史的価値より耐久年数の方が気になるこの小劇場は、しかしだからこそ、さほど格式などを重んじる必要のない二次文化的な演目を行うのにうってつけでもある。


本物の劇場など高くて借りるのも入場するのも大変だし、ましてやネクタイやスーツなども持ち合わせてすらいない若者達が、だみ声で黄色い声援など送リ続けるなどという破廉恥で非常識な鑑賞にはそれ相応の会場ハコが適切でもあった。


舞台の上には彼らのスーパーアイドル、ニオルちゃんことハーフエルフのニオルリージャが大きな振り付けで踊りながら歌っており、最後に半身立ちになり、右腕を顔の左側に巻きつけるようにして、右足を少し曲げたお決まりのポーズでシメると、聴衆から感動の大喝采が巻き怒った。それを合図として舞台の明かりも消えてステージの終わりを告げた。しかし聴衆の感動の拍手はその後もしばらく続くのであった。

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