第12話 振り返り

 いろいろあったがなんとか一日終わったな。まさか初手で俺の平穏な生活が終わるとは思ってなかった。騒がしくて一か月ぐらいの疲労感だ。でも

「悪くなかったな。」

 自然と呟きがこぼれる。そう思っている自分にびっくりする。今までだったらそう思うことは無かっただろう。人って変わるもんなんだな。自然と思い浮かぶのは昨日俺に告白してきた女の子。笑みがこぼれる。まさかなんか完璧超人に好かれているなんて思っていなかったが、人生には予想外のことが起こるんだな。その時、ふと昔のことを思い出した。

「あの子、今頃何してるんだろう?」

 俺が小学生だった頃いじめられっ子を助けた過去があった。その子は泣き虫で放っておけなかった。だが、時が経つにつれて話すこともなくなっていった。まぁ、名前すら知らなかった子だしな。相手も俺のことなんて忘れているだろ。

 明日は金曜日だからあと一日質問攻めに耐えれば土日は自由だ。早く明日になって欲しいなぁ、などと考えていると、


 プルルル


 電話?誰から?名前を見ると『日比野陽華』という文字が見えた。コールボタンをタップする。

「もしもし。」

『も、もしもし。明先輩ですか?』

「そうだよ。」

『そうなんだ。よかったぁ。』

 安堵のため息が聞こえた。

『夜に男子と電話することが初めてだから緊張しちゃったよ。』

「別に緊張しなくても。」

『好きな人との電話なんだから仕方ないでしょ。』

 面と向かって好きと言われるのはまだ慣れてない。しかも電話だから耳元で聞こえて心臓に悪い。

「それで、何か用か?」

『....用事がなかったら電話しちゃダメなの?』

「ダメじゃないです。」

 即答だった。陽華の可愛い声が夜にも聞けるなら個人的には役得だ。

『だったら素直に嬉しいって言ってもいいんじゃない?』

「素直じゃなくて悪かったな。」

『拗ねないでよ!』

 だって恥ずかしいじゃん!



 それからとりとめのない雑談をして、電話を切った。不思議なものだ。陽華となにかすることが楽しいと思ってるなんて。もともと関わりなんてなかったのにな。

「寝るか。」

 なぜだかいつもより心地いい眠りにつけそうな気がした。






 〜陽華〜

「先輩がおやすみだって。頭ん中に反芻しすぎて寝れないよ〜。」

 このあと爆睡しました。

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