32:デート?③~ドワーフのカイン後編~(アルバード)

 シエラ嬢は店の中をキョロキョロしまくっていた。


 「アルバード、ここ本当にいろいろあるのね。武器なんかも置いてあるし、よくわからないものもいっぱいあるもの。」


シエラ嬢は店内に興味深々みたいだ。まぁお姫様が来るようなところじゃないだろうからな。


 「ここ実はさ、本職は鍛冶屋なんだよね。」


 「あ、だから武器や鎧があるのね!」


 「そうそう、だけどおっちゃんはいろいろと試行錯誤が好きでね。武器や防具にある種の魔法を付与したりとかするもんだから、それに使う材料がいろいろ豊富になってさ。そうするうちに道具屋並みにいろんな物を扱うようになったって訳。」


 「凄いわ!カインさんは勉強家なのね!」


 「あ、そういえばさっき、洞窟に繋がっているのは何故なのかってことだけど。この洞窟の奧に湧いてる水が関係してるんだよ。」


 「湧き水のこと?」


 「そそっ、武具を作る過程で水を使うんだけど、おっさんの作る武具にはその水が恐ろしくマッチングしてるんだってさ。で、昔は汲みに行ってたらしいんだけど、めんどうになって、湧き水の出てる洞窟に住み着いたってわけ。」


 「カインさん本当に凄いのね!そこまでこだわりを持って作るなんて、並大抵のことじゃないもの!」


 シエラ嬢は本当に感心しているようだ。まぁでも確かにそうだな。

 そんなやり取りをしていたら、おっちゃんが戻ってきた。


 「あー用意したぞ。」


 あれ?おっちゃん、心なしか顔が赤い・・・あぁシエラ嬢の話し聞いてたんだな。 

 年甲斐もなく、照れてやんの!

 

 台の上にはイライザがリストアップした品物がいろいろと並べられた。

 

 「おっちゃんサンキュー!料金はどのくらい?」


 「あぁ~今回は構わんぞ?」


 「え?そう言うわけにはいかないっしょ。」


 「料金はな?」


 あ、なるほど。


 「あー了解。で、何狩ってきたらい?」


 そういうと、おっちゃんは悪い顔をした。


 「お前さん、わかってるじゃねぇか。リストにあったバジリスク狩ってくるだろ?イライザが使う分以外の後の残りをくれたらいい。」


 「了解持ってくるわ。解体は?」


 「しなくていい。こっちでやる。調度ストック切らしちまってな。金よりそっちほうが助かる。」


 「近々討伐にいくから、その帰りに持っていく。」


 そういうと、シエラ嬢は少し不安そうな顔で、聞いてきた。


 「アルバード、さっきも思ったのだけど・・・もしかして魔獣を狩りにいくの?」

 

 「あぁ、ライザからのリストにあるけど、そいつの一部を素材で使うからね。なんで?」


 そういうとシエラ嬢は思いつめた顔で、


 「・・・ごめんなさい。私のせいで危ないことしなきゃいけないし・・・」

 

そう言うと、シエラ嬢はシュンとしてた。


 あーシエラ嬢は・・・責任感じたんだな。俺はシエラ嬢の目線に合わせようとしゃがんで、彼女の目を真っ直ぐにみた。うん、潤んでるな、半泣きになってたようだ。


 「シエラ嬢、俺にはこの程度の依頼はなんてことないんだよ。自慢じゃないけど、冒険者ランクS級っていったろ?まぁ最近は侯爵になるべく、ちと勉強してたから現場は少々遠ざかってはいたけど、鍛錬は怠ってないしな!」


 そう、俺は身体はずっと鍛えていたのだ!っていうか習慣もあるし、いつ何があるかわからないからな!


 「何だ、お前さん、最近見かけないと思ったらそんなことしてたのか!」


・・・おっちゃん笑ってる。うん俺が一番わかってるよ、柄じゃないって!


「なぁ、嬢ちゃん。心配かもしれないが、こいつは荒事には慣れているから、心配なんざいらねぇよ?それより応援してやるほうがこいつの為になる。」


シエラ嬢はおっちゃんの言葉に何かに気付いたように。


 「そっか、そうね。応援しないと・・・アルバード、頑張ってね!」


 「あぁ任せとけ!!」


 そう言ったら、シエラ嬢は笑顔になった。


 「おっちゃん、ありがとうな。じゃそろそろお暇するわ。近いうちに持ってくるから!」


 「あぁ待ってるぞ。」


 「カインさん、いろいろとありがとうございました。」


 「あぁ嬢ちゃん、良かったらまた遊びにきな。」


 シエラ嬢は嬉しそうに


 「はい!」と勢いよく返事をした。


 「おっちゃん、俺と対応が違う・・・」


 「あぁ?当たり前だろ。むさい男なんざ、楽しかねぇ。」


 そしておっちゃんは小さい声で俺にしか聞こえないように言った。


 「あの子訳アリだろ?詳しくは聞かねぇが、イライザが絡んでるくらいなら、厄介なことになってるくらい、わしにもわかる。しっかり守ってやんな。」



 おっちゃんはさすが伊達に長生きいしていないというか、シエラ嬢ことは見ただけで察したようだった。 


 「あぁ、もちろんだ。」


 俺は力強く言った。 

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