21:到着!そして再会(アルバード)

 シエラ一行はバランドールの港町、コーデルについた。ちなみに港町だけあってコーデルは海産物が名物だ!


 船が港に着くと、バランドールの王宮からお出迎えの騎士と魔導士達が20名弱ほど待っていた。

 シエラはそれらを見渡すと、


 「はぁ、また来ちゃった・・・」


 シエラにしてみれば、留学生活も楽しいわけでもなかったし、呪われて幼女にされるわで、いい思い出とは到底思えぬ心境なのは無理もないことだった。


 「シエラ嬢、俺がついてるからな。」


 シエラ嬢は憂鬱な表情を浮かべてる。ま、そりゃそーだろうなー。聞いてた感じじゃ楽しい思い出ってわけじゃないだろうし。


 「うん、アルバード頼りにしてるわ。」


 シエラ嬢は笑顔でそういった。 


 と、その時、

 

 「シエラ王女!!」


 と、なかなかイケボな声が聞こえた。バランドールのお出迎え一行の中の先頭に立っていた男が発したものだった。


 見た目はプラチナブロンドの髪に翠の瞳と、かなりのイケメンで、いかにも王子様って風貌の男だ。恐らく聞いていた特徴と一致するから、バランドールのライル王太子なんだろう。


 「シエラ王女お待ちしていました。遠路はるばる再びこの地を訪れていただけたこと、大変嬉しく思います。」

 

 男はよく見たら、頬を紅潮させ嬉しそうにしている。見ただけでわかる。心底シエラ嬢に会えたことが嬉しそうだ。


 ・・・あーうん、聞いてたどおりだな。


 「ライル王子、突然の訪問のご無礼をお許しくださいな。」


 シエラ嬢は幼女ながらも、淑女の礼は欠かさず対応している。さすがだなー。俺もこういうところは見習わないとな。情けない話しで、俺は冒険者でずっとやってたもんだから、こいう貴族間のやり取りは本当に苦手なのだ。一応言い訳をすると、苦手なだけであって出来ない訳じゃないぞ!


 「いえいえ、元はといえばこちらが不甲斐ないことで・・・本当に申し訳ない。」


うん、それはその通りだな!って思ってても言えないので心の中だけで留めておく。



 俺達の訪問は非公式になっていた。というのも当然シエラ嬢が幼女化しているから、とこれに尽きる。何せこっちでもあっちでも箝口令を布いてるからな。ここにいる兵士達も固く口止めされているだろう。



 「先触れでは、魔女のイライザ殿が同行するとありましたが・・・」



 そういうと、ライル王子は俺達を見まわした。


 「私が、イライザよ。よろしくね、バランドールの王子様。」 


 そういうなり、イライザは俺たちの間をすり抜け前に出て髪をかき上げる仕草をした。いや流石に無礼じゃね?って俺は思ったんだけど、以外にそうでもなかったらしく、羨望の眼差しと、あの方が噂の魔女様!お美しい・・・とか本物のイライザ様だ!などのどよめきが兵士たちから聞こえいた。

 

 『私、向こうじゃ結構人気者なのよ。』なんてライザが言ってたのは本当だったんだなって、ちょっとびびったわ。


 「おぉ、貴方が、黒の魔女様ですね。お噂はかねがね伺っております。バランドールは、協力を惜しみませんので、どうか解呪の助力をお願いします。」


 「ふふ、任せて。可愛いお姫様の為にも頑張るわ。」

  

 と、ライザはウインクをしていた。 


 魔女というのは、どこの国でも優遇される。(一部例外もある。)魔女という種族が希少種であること、また魔法についてもずば抜けた能力があるゆえ畏怖されているからだ。

 

 特にバランドールは魔力至上の魔力カーストの国であるから、魔女の特性そのものが、バランドールの価値観と合致する。そしてそれに加えてイライザはS級冒険者として、社会貢献の実績もあることから、王族からも一目おかれているので、かしこまった話し方をする必要がないのだ。



 「黒の魔女?」


 はじめて聞いたその通り名に、シエラ嬢は疑問を口にした。


 「あぁ、私の通り名よ。安直に髪が長くて黒色だからじゃないかしら?私も良く知らないのよ?」


 ライザ、適当だな!でも合ってるよ!


  「な、なるほど。」


 シエラ嬢も返答に困ったようだった。  



 「あと・・・こちらの御仁は・・・」


 ライル王子は俺の方をちらりと見て、シエラ嬢に視線を戻した。


 「彼はアーベンライン侯爵の嫡男のアルバード・セル・アーベンラインと申しますの。」


 「あぁ、S級冒険者のもう一人のご助力いただける方ですね。」


 「えぇ、それに・・・私の今の婚約者ですの。」


 「え?婚約者?」


 ライル王子は、シエラ嬢の婚約者と言う言葉にあきらかに驚き、そして動揺していた。だが俺は構わず、自己紹介することにした。


 「シエラ王女の婚約者、アルバード・セル・アーベンラインと申します。どうぞお見知りおきを、ライル殿下。」



 「そ、そうですか。貴方が今の婚約者ですか・・・」


 「えぇ、婚約者として私は全力でシエラ王女の解呪と事件解明にあたる所存です。」


 「・・・わかりました。勿論こちらも、協力は惜しみませんので、何でも仰ってください。」


 「えぇ、よろしくお願いします。」


 ライル王子は握手を求めてきたので、握り返したが・・・

 思いっきり力込められてるし!


 ふーん、今更シエラ嬢が惜しくなったってか。

 

 こいつ気に入らねー!

 

 




 やり取りしている言葉におかしなところはないものの、ライル王子とアルバードの醸し出すオーラは周りの誰が見ても(1名除く)いいものでないのはわかった。


ユーナとイライザはその様子を見て、


 「負のオーラ満載ですね。」 


 「なんだか一波乱も二波乱もありそうだわ。」


 「まぁ、逃がした魚は大きかったって心境なのでしょうねぇ。」


 「激しく同意するわ。」


 「?」


 シエラだけは不思議そうに首をかしげていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る