16:夜は大人の時間(シエラ)

 ドンドンドン!!!!


 ドアからものすごいノックがした。



 「お姫様!大丈夫?!」


 「王女様!大丈夫ですか?!」



 イライザさんの声だ。それに護衛の声も。

 離れていたはずなのに、私の変化に気づいたみたい。さすが魔女様。


 「ユーナ、イライザさんだけ入ってもらって。イライザさんなら、元に戻れたこの変化が何なのか、わかるかもしれないから。」


「そ、そうですね。イライザ様ならご説明つくかもしれませんね。早速診ていただきましょう。その前に、姫様こちらのガウンを着てください。」


「そ、そうね。」


私は大きくなったことで、服が破けてあらぬ格好になっていた。いやーーー




  



 「急に大きな魔力をお姫様のいる部屋から感じたから、慌てて飛んできたのよ。」


 「そ、それはありがとうございます。」


 うん、やっぱりイライザさん良い人だわ。


 「それにしても・・・うん!やっぱり元の姿よね?元の姿も可愛いわ!~また小さいときとはテイストが違っていいわよ!」


 イライザさんは、私が元に戻っても、お気に召してくれたようだ。


「で、なぜこうなったのか、経緯を教えてもらえる?」


 ・・・そうなりますよねー。どうしよう。まかさアルバードを好きってことがわかったからなんて、言うの恥ずかしすぎるんだけど・・・


 私がどうしようと、言いあぐねていると、その様子を不信に思ったらしく、


 「ん?どうしたの?何か言いにくい事??」

  

 はい、ものすごく!!私がうつ向いてしまうと、イライザさんはふわりと私の両肩に手を乗せた。


 「お姫様、言いにくい事なのかもしれないけど、事情を説明してくれないと、私もどう解析したらいいのか、わからないわ。勇気を出して、お話してくれる?」


イライザさんは私が元の姿に戻っても、さっきの幼かった私と変わらぬもの言いで、論してくれていた。


そうよね。恥ずかしいけど、元々この呪いの解呪は両想いが条件だったものね。


って、あれ?そうだよ、両想いが解呪よね?なんで私今元に戻っているんだろ?しかもさっき、恋心を自覚したばかりだし。あれ???・・・うん、やっぱりちゃんとお話しよう。


 「魔女様、お話します。」


 「うん、お願いね。あ、あとさっき言ったでしょ、魔女様じゃなくてイライザね♪」


 「あ、そうでしたね。」


 さっき、晩餐を一緒にした時に、言われたんだった。


 『堅苦しいのは好きじゃないから、魔女様でじゃなくて、イライザって呼んでね♪』と。










 寝室では、ユーナがお茶を入れて、私とイライザさんがテーブルを挟んで向かい合っていた。


 「なるほど~アルトをねえ。」


 お話したのはいいけど、イライザさんニヤニヤしてる。恥ずかしいよーー。


 だけど、次の瞬間イライザさんは真剣な顔になった。


 「お姫様、落ち着いて聞いてね。」


 「はい。」


 「恐らく、『呪い』は半分しか解呪されていない。朝になればわかるけど。」


 「え?半分ですか?」

 

 「うん。半分だけ。つまりお姫様の思い、片方の思いだけの分で『呪い』が解けているの。だから今は元の大人の姿に戻れているの。一時的にね。」


 「片思いだから半分・・・」


 「そう。朝になれば子供に姿になると思うわ。私の見立てではお姫様の中にまだ呪いが燻っているのが見えるもの。残念だけど、呪いはまだ解けていないわ。」


 「それって・・・もしかして夜は元に戻れて、朝には子供になるっていう解釈で合っていますか?」


 「そういうことね。」


 えーーーー元に戻れたかもって喜んだけど、半分だけ。しかも片思いだからって!!


 「あの・・・それって恥ずかしいような気が・・・」


 「・・・まぁ、そうね。恋はしたけど、片思いですって筒抜けな感じではあるわね。」


 「いやあああああ。そ、それどんな羞恥プレイですかーーー!」


 ちょっなんか想定外!!まさか両想いって解呪方法にこんな落とし穴があったなんて!!


 「姫様、せっかく初めて恋を知ったというのに・・・」


 ユーナは心底同情した眼差しをシエラに送っていた。



 いやよ!こんなの恥ずかしすぎる!アルバードに知られたくない!それに、これ冷静に考えたら絶対不味い。


 

 「イライザさん!お願いです。アルバードに言わないで!!」


 「え?」


 「恥ずかしいです!アルバードに片思いしてるって、こんなことでバレるの本当に恥ずかしいんです!それに、アルバードが知ったらきっと責任感じちゃう気がするんです。お願いです。この事、アルバードには言わないで!」


 

 私は必死にイライザさんにお願いした。


 「お姫様・・・」

 

 「イライザ様、私からもお願いいたします。姫様は初恋なのです。それがこんな形なんて・・・どうか、今のところはご内密にお願いできないでしょうか。」


 ユーナも私の思いを察して、一緒にイライザさんにお願いしてくれた。

 イライザさんはしばらく考え込んで・・・


 「そうね、今のところはまだアルトにいうのは、止めておきましょう。」


 「あ、ありがとうございます!」


 「私が呼ばれたのも元々は両想いっていう、不確定要素なものが解呪方法だから、他の方法を模索してくれってことだったしね。」 

 

 そいうと、イライザさんは安心してとばかりにウインクした。

  

 恥ずかしいのは勿論だけど、きっと彼が知ったら変なプレッシャーを与えてしまうと思うの。好きとか嫌いとか、他人からどうこう言われてなるものじゃないもの。私がアルバードの事が好きになったから、あなたも私のこと好きになって!なんて言ってどうにかなるものじゃない。


 両想いが解呪方法なんて乙女チックねー、とか聞いた時は思ったけど、まさかこんな中途半端なことになるなんて思いもしなかった・・・。


 はぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る