11:シエラの回想~前編~(シエラ)
アーベンライン侯爵のことは知っていた。だから彼と一緒にいるのが冒険者上がりの息子だというのはすぐにわかった。何せ身体も大きいし、それに侯爵によく似ていた。アルカディアでは珍しい黒髪も深い藍色の目も。
バラ園には、気分を切り替えるために散歩をしていた。まさかあそこで会うとは思わなかったんだけど。
バランドールでは、帰る間際に解呪方法がわかったと報告があった。
『解呪には、真の愛が必要です。』
はい?真の愛?
つまりは、相思相愛、両想いによって、解呪されるらしい。
なによ、どこぞのおとぎ話みたいな設定はーーーー!
って思った私は悪くないと思うのよね。
ソレに食いついたのはライル王子だった。
・・・うん、ごめん。今の私に好意を寄せてもらってるのはわかるんだけど、側室も迎えないといけない立場という事も、充分にわかってはいますが・・・。
幼女のままで公務したら不味いでしょ?(私は構いませんけどね!)
それに元に戻ったとしても、魔力無しの私では国民感情逆なでしてしまいますよ?
王族なら、このまま帰した方がいいって判断になりませんかね?
それに、もう代わりの令嬢もいるから、私じゃなくても大丈夫ですよね?
と言うわけで、一方的な愛?では解呪されるわけもなく、2年ほど近くの留学期間を終えてやっとアルカディア王国に帰ることができた。
お父様には、向こうであった事を報告した。
魔力カースト制のバランドールでは、魔力のない私だと国民に反感をかう事。
そして恐らく、魔力ない私への不満でこのような呪いをかけられたこと。
・・・側室のこと。
手紙では知らせてあったけど、やっぱり口頭でもちゃんと伝えないとね。
お父様は私の話を聞いて、泣きそうになっていた。こんな目に合わせてすまないと。
だけど、私知っているのよ。お父様が実は良かれと思ってライル様を婚約者に選んでくれたこと。実際私も浮気現場を見るまでは、悪い印象はなかったし、周りの評判も良い方だったから。まぁ浮気も、浮気と言うか、私が魔力がないばかりに急遽ライル様が立ち回らないといけなくなったのはわかっているからね。かと言って、勿論気分のいい物ではないけれど。
あとは、まぁ最後の方で残念な嗜好を知ってはしまったけどね。
そして、今ならいけるかもしれないと、お願いをしてみた。
ライル王子と婚約を解消したいと。
お父様はさすがに私を不憫に思ったのか、すぐに了承してくれた。
バランドールには、幼女化によって公務が行えない。というのを大義名分にして婚約解消の理由を伝えた。
ライル王子は、いつか元に戻れるかもしれないからと、婚約解消にはごねていたようだけど、いつかってそんな不確定なのではダメでしょ。それに元に戻った私だと興味ないですよね?
バランドール王からは、残念だが婚約は解消という事で了承をいただいた。私に魔力がないことは知っていたはずだから、きっと向こうも胸をなで下ろしていたと思う。
そして、こんなことになっ申し訳ないという謝罪と引き続き向こうでも呪いついての事件解明はしていただけると、お約束いただけた。
もちろん、自国のアルカディアでも、いろいろ解呪については研究をしていた。
そんなところへ、アルバードの話がでたのだ。冒険者上がりの侯爵家嫡男になったばかりの男ががいると。
冒険者については詳しくないけど、とにかく凄腕らしいと。
その彼の婚約がなくなったからと、お父様にその人との縁談の話をされたのだ。侯爵なので降嫁先としても申し分ないし、元冒険者だったから、私の解呪方法の調査も兼ねられるから一石二鳥だと話をされたのだ。
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