10:王女とお茶会~後編~(アルバード)

 アルバードは勿論、見なくても気配でわかっていた。


おっさん二人でのぞき見なんて趣味悪いなーと思ってはいたが、まぁ気になるのだろうと思い放っておいた。



 「シエラ嬢こそさ、今頃言っても遅いんだけど、俺で大丈夫?俺、姫さんより10近く年上なんだけど?」

 

 そういうと、シエラ嬢は少し驚いた顔をして、そして少し笑った。


 「ふふっ。失礼だけど、見た目とは裏腹にお優しいんですね。」


 「俺はこう見えて、一応紳士だからね!」


 「やだ、自分で言ってる。」


 「いやいや、姫さんも自分で言ってたからね!」


 「あらやだ、ほんとね。」


 シエラ嬢と目を合わせたら・・・


 「「ぷっ」」


 なんだか、おかしくなってきて二人で笑っていた。



 「こんなに、」


  ん?急に神妙になってどうした?


 「こんな風に・・・お話するのが、私がこんな口調で話せるのは、ユーナだけだったから、とっても新鮮だなって思って。こんなに笑ったのも久しぶりだし。」


 そう言うと、少し寂しそうな笑顔になった。


 「あー王族だもんな。マナーとかの教育とか大変そうだよね。俺も昔は、まぁ貴族として一応は教育受けたんだけど、学院卒業してからすぐに冒険者になったから、いろんな奴とつるんだりしてたら、口調が移っちゃったけど。」


 そうだよな。小さいから惑わされそうになるけど、本当は18歳だもんな。

 悲しいよな。辛いよな。けどそういう気持ちをひた隠しにして、耐えていたんだろう。

 その為にも、早く解呪しないとな! 


 よし、そろそろ本題に入るとするか。


 「シエラ嬢、思い出したくないこともあるかもしれないけれど、調査の為には必要なことなんで、事の経緯を、話してもらえるか?」


 そういうと、シエラ嬢はコクンと頷いた。

 そして、真剣な顔をして、


 「はい、私の知っていることはお話させてもらいます。アルバード様、どうか・・・どうか助けてください。お願いします。」


 そう言うと、ペコリとお辞儀をしていたが、その瞳には涙を潤ませていた。


 

気丈には振るまっていたけれども、やはりかなり堪えていたようだ。

そりゃそうだろうなー。幼児化して1年半ほどって話だし。


 姫様といえど、年頃の女の子だもんな。可哀想に無理もない。


 自分でいうのも、ハズイんだけど、ここは安心させてやらないと!


 「シエラ嬢」

 

俺の声で、彼女は少しうつ向いていた顔をあげた。


 「自慢じゃないけど、俺の冒険者の頃の依頼成功率は100%。受けた案件で達成できなかったことはないんだ。だから大船に乗ったつもりでいてくれ!」


俺はビシッと親指を立てた。


 シエラ嬢は、俺の言葉に驚いた様子だったが、やがて、潤んでいた瞳からは涙が零れていった。


 「アルバード様・・・ありがとう・・・」


 「おいおい、様はいらないんだろ?」


 「そ、そうだったわね。」


 泣きながらも笑顔が出た、よかった、実はちょっと焦った。



 「ほらっ」


 俺は持たされていたハンカチを渡した。


 「あ・・・ありがとう」


 「落ち着いたら話してくれ。」


 「うん・・・」



 さて、どんな話が聞けることやら・・・  







 再び、親父ーズ。まだ覗いていた。



 「おい!やっぱりいい感じじゃないか!」


 アルカディア王はよほど嬉しいらしく、アーベンライン侯爵の肩をバンバン叩いていた。


 「陛下、痛いんでやめてください。そうですね。ただ息子は恋愛ごとには少々うといというか、鈍感な傾向がありますので、この後が心配ではあるんですがね。」


 「いやーしかしあわよくばとは思っていたが、ここまでとは!」


 このおっさん聞いてないな、と侯爵は思った。


 「真の愛とやらが、成就してくれるに越したことはないですが・・・息子はちゃんと依頼を達成できると、私は信じてますよ。」


 

 親父ーズは満足そうに二人の様子を見ていた。(覗いていた。とも言う)

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