7:人のタイプにケチを付ける気はありませんが・・・(シエラ)

 その後は、当然てんやわんやとなった。バランドールの王からも謝罪。総力を持って、解呪方法や犯人を探すので、国にはまだ帰らないで欲しいと懇願され、結局婚約はまだ継続していた。


 シエラの母国アルカディア王国にも、シエラ王女の幼女化について速やかに通達された。この事態を知ったアルカディア王はすぐさま、娘のシエラを戻そうとしたが、魔法においては、バランドールが長けているのは周知の事実。アルカディア王は娘がこんなことになって腸は煮えかえるものの、一番解決に近いのはバランドール王国にあるとして、あと半年の期限付きでバランドールの滞在が継続となった。


 シエラ王女の幼女化については、バランドール魔法省のあずかりとなり、懸命に事件解明と解呪についての捜査が行われていた。だが、事件解明の糸口はいまだ掴めなかった。








 おかしい。


 シエラはライルの態度がおかしいことに気付いていた。



 初めは、呪いで小さくなった自分に、気遣ってのことだと思っていた。


 だが・・・なんというか。妙にスキンシップが多いのだ。こんなことになる前は、エスコートと夜会のダンス以外で触れたことは一度もなかった。

 なのに、今では事あるごとに抱っこしようとか、手をつなごうとか、やたらと何だかんだ理由をつけて触れてくるのだ。

 それに、定期的なお茶会でしか会うことはなかったのに、今ではほぼ毎日顔を覗かせる。

 あれだけ事務的だったくせに、この態度の変わりようは・・・


 「おかしいわ。」


 シエラは思っていたことが、声にでた。


 「え?何がですが??」


 「ライル様のことよ。おかしいと思わない?」


 「あぁですね。ですが良かったじゃないですか。事務的だったのが、お優しくなられたようだし。」


 「ううん、そんなんじゃないのよ。何かおかしいよ!」


 シエラはもしかしてと、ある可能性を見出していた。まさかとは思いたい。だが、そう考えると腑に落ちるのだ。


 確証はまだないけれども。



 「まぁ、いいわ。そろそろ帰る支度はしなくてはいけないわね。」


 「そうですね。滞在期限も迫っていますし、こちらの魔法省に期待していましたが、いまだに進展はありませぬものね・・・」


 「そうね、こちらの魔法省が手に負えぬのなら、私は戻れないかもしれないわね・・・」


 「そんな、姫様!まだ諦めてはいけませんよ!時間はかかるかも知れませんが、きっと何か方法が見つかりますよ!!陛下も向こうで方法を探しているとお手紙に書いてあったじゃないですか!」


 「そうね。諦めてはダメね。」  


 シエラはさすがに進展がないことに、焦りを感じでいた。

 

 「姫様・・・お労しい」


 ユーナは涙ぐんでいた。


 「ユーナ、あちらにはそろそろお暇する旨を伝えてちょうだい。私も正直なところいい加 減自国に帰りたいから。」


 「はい、姫様仰せのままに。」


 そして、国に帰ったら、婚約解消とシエラは決めていた。

だが、その事はここでは言うまいと思っていた。それはライルの最近の行動から、ここでその件を言うのは得策ではないと感じていたからである。







 「シエラ嬢!」


 「ライル様。慌ててどうなさったのです?」


 「貴方が国に帰ると聞いたのです!」


 「はい。お約束の期限ももう間もなくですから、国に帰ろうかと思いまして。」


 「そんな!解呪の方法はまだ見つかっていないんですよ?!」


 「そうですね。ですがかと言って私がここにずっといるもの違いますからね。どの道一旦は国に帰りとうございます。元々留学期間は2年ですし、少し早まるだけですわ。」


 「な、なら期間まで居ればいいではないですか?!」


 「それは・・・あくまで留学という勉学があってのことでしょう?この姿で学院も通えない状態では意味がないのではありませんか?」


 そう、シエラの幼児化は、国の威信に関わるものとして外に情報を漏らさぬよう箝口令を敷かれている。当然シエラは学院には通えなくなって、ずっと王宮に留まっている状態だった。 


 「た、確かにそうですが、私は、今の貴方の姿なら!じゃなくって、今の姿でも共に生涯を添い遂げる気持ちに変わることはありませんから!」



・・・今間違いなく、今の姿って言ったわよ、この人!


「・・・お気持ちは大変嬉しく思います。ですが、この姿のままでは公務をすることは適いません。民に姿を見せない妃など不安を煽るだけですわ。私の祖国アルカディアでも、私の解呪については方法を探しております。申し訳ありませんが、こちらバランドールでも解呪できる方法を引き続きしてくださると、有難いですわ。」


 「そ、それは勿論です!ですが!」


 「帰るときにはまた改めてご連絡します。申し訳ありませんが本日はもうこの辺で。」


 「シエラ嬢・・・」



 ライル王子はガックリと項垂れて去っていった。







 「姫様、何となくおかしいという理由がわかりました。」


 「ユーナもわかった?」


 「はい。お話だけではいまいち実感がわかなかったのですが・・・、こう目の当たりにして確信しました。」


 「でしょ。ライル様『私の今の姿』ってはっきり言っちゃてたものね・・・ロリ〇ン・・・」


 「姫様、しー!ですよ、しー!!誰が聞いてるか、わからないんですから!」


 「あ、そっそうだったわね。」



 そう、シエラは気づいてしまった。あれだけ事務的だったライルが、自分が幼児になったとたん、甘々に態度が変わったのは、彼が幼児嗜好、つまりはロリ〇ンだったとわかったからである。


 やっと好意的になったかと思えば、まさかのそっちの趣味。人の趣味について批判をするつもりは毛頭ないが、それが自分に向いているのならば、話は別である。

     


 「早く帰りたーーい。」

 

 「同感でございます。」

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