一緒に笑えるようになるには?
食連星
第1話
ようやく繋がった回路は,
ゆっくり開眼という作業に入ることが出来た.
ざっと10人くらいかな.
割れんばかりの拍手と,
満足げな笑顔が
五感に飛び込んでくる.
白衣を着た学者様方.
だいぶ前から耳は聴こえてた.
「目覚めると思う?」
「目覚めはするだろうよ.
データ上は規定通りだよ.」
「100年って所が200年って延びた事…
怒ると思う?」
「医学生だったんだろ?
落ち着いて,了承するんじゃないのか?」
「だといいけど…」
「賭ける?
怒るか.
怒らないか.
さめざめ
…泣くか?」
「ちょっと!
不謹慎だわ…」
「まぁ,確かにね.」
はぁ…
僕で賭けないで欲しいな…
…100年って聞いてたけど,
200年って…?
倍じゃないか.
とうに置いてきたような体が,
ゆっくりと命を得始める…
といいんだけど.
目が開けられるような気がしないな…
ストレートに地元の医大に入って,
これからって時だった.
忙しかったし,
一時的に免疫力が落ちているのかと
思っただけだった.
診断貰った時点で,
体のあちこちで炎症が起きていた.
目も最悪で,
頭も.
抗炎症剤使って,
一進一退だった.
何で僕だけ…
そんな時だった.
拮抗してくれる微生物に頼むプロジェクトを
持ちかけられた.
白羽の矢が立った.
ちょうど良いモルモットが僕だったのだろう.
治療には…
100年かかると.
だけど,何もしないと目も見えなくなって…
頭の炎症が,僕を僕でいられなくさせるかもしれない…
悩んだけれど,
悩む時間すら残されていないのかもしれないと思いながら,
半ば,焦ってやけになって,
プロジェクトを受け入れた.
聞こえが良い言葉を使えば,
未来に望みを託したんだ.
これで,
良くなってなかったなら,
訴えるよ.
何の100年だったんだ.
実感湧かないけど…
動ける様になったら,
何しよう.
あれから,200年か.
駅に行ってみようかな.
家に行っても,
近しい遺伝子を持った
お互い知らない人がいるだけだろうし.
また,
大学に通える事と,
生活基盤を整えていて欲しいっていう
お願いをして,
治療に臨んだ.
約束守ってくれるといいけど.
書類に捺印したし,
大丈夫だろう…
あの書類,
誰がどこで保管しているのか…
銀行に保管したんだっけ.
あれ,今どこ…?
もう自分以外失うものが無い…
まぁ,
そう考えると…
楽…
なのか…
あっ…
右手動くかも.
体中がギチギチしてる.
シナプスが繋がったか!
体のあちこちが,
手を繋ぎ合ってる.
僕は,生きる.
そして,実際に
手を繋げる人を
これから僕の世界で探すんだ.
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