君との夏は流星群となって夜空に降り注ぐ

空野 雫

序章

 流れ星がきらりと一つ光った。たった一つ。その一つに続きいくつもの流れ星が流れる。その様子に周りにいた人々の歓声は次第に大きくなっていく。

「君は流れ星ってどんな時に流れるか知っている?」

 消え入りそうな声で言った君の声を僕は思い出した。

「流れ星はね、あれは、大切な人との思い出なんだよ」

 今の僕より幼かった頃の僕は首を傾げた。

「昔おばあちゃんが言ってたの。いくら大切な人との思い出でもね、人間ってそれ以上に忙しくて、大変で、苦しくて、辛いことで頭がいっぱいになっちゃって、その子の事忘れちゃうんだって。でもね、歌の歌詞の一部とか、ある本のたった一言で、その人との思い出が溢れかえる時があるんだって。そんな時、流れ星が流れるんだよ」

「じゃあ……今日みたいな流星群は……――」


「ウワァアア!!!!」

「お母さん、見てみて!」

 周りの人の声によって僕の意識は思い出の中から帰ってきた。

 11月18日 今日は流星群が見れる日。

 大切な人との思い出が夜空に降り注ぐ日だ。



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