第38話 第14話
更にスワイプすると、まさかの俺の写真。それも「ーー加害者」として。
どちらかと言うと俺は被害者なのに。
何の前触れもなく、通り雨のように、どしゃぶりの雨が降る。
陽が暮れていく。
俺がやろうとしていた復讐はネットを通して他の誰かにやられてしまったらしい。
残念だ。
山崎太郎にも、沢田昌平にも、同じような誹謗中傷のメールが沢山届き始めているらしい。彼はケータイの電源をオフにしているようだった。
俺はまだ準備段階だったが、思いもよらない形で、俺の復讐は果たされてしまった。
俺は自らの計画にはまってしまったのかも知れない。
まさかこんな事になるなんてーー。
ドアを開け外に出ると、俺は呼び止められた。
振り返ると、静かにこちらを見ている男、二人組。
あの険しい表情は、どう見てもドラマの中に出てくる警察官だった。
「少しいいですか?」
警察手帳を軽く見せて、警察官が言った。
「はい」
「ーーこの写真をみて下さい」
ーーこれは?
「ネットでの記事をコピーしたものです」
少し禿げた方の警察官が言った。
「なんでこんなものが?」
「分かりません。しかし、警察としても調べなくてはならないので、お話をお聞かせ下さい」
任意同行で、僕は警察署へと導かれた。
狭い。
たたみ四畳ほどの狭いスペース。
こんなとこにいたら、息が詰まりそうだ。
「名前は?」
「斎藤秀二です」
「ーーこの人を知ってますか?」
警察は男の顔写真を見せてきた。
「知りません。会った事もありません」
警察官に向かって俺は言う。
「調べれば分かることなので言いますが、俺から聞いたって言わないでくれますか?」
警察官は頷く。
「俺の父が殺されたんです。山崎太郎、沢田昌平、中山兼、そして、藤田しげるにーー」
「君のお父さんの名前は?」
「斎藤健吾です。まー父にも非はあったようですけどね、、。それを、あなた方は「自殺」として片付けてしまった。俺らの暮らしを壊した張本人は、それを隠して平然と日常を送っているーーあなたなら許せますか?」
秀二は感情的にはならず、警官に問いかける。
警官は僅かに首を振り、当然、許せないと言う。
「ーーこのサイトは知ってますか?」
義務的な質問。
「ついさっき、たまたま見ました」
「君も犯人だと書かれている事に関してはどう思う?」
「まずもってあり得ない。だって俺は当時、まだ中学生だったし、中山兼や藤田しげる、沢田昌平、山崎太郎の四人の事も知らなかった」
「じゃなぜ、その四人の事を知ったんだ?」
警官は言った。
「父の遺品を整理してたら見つけたんです。こんな紙切れをーー」
四人の名前が書かれた紙を、警官の彼に渡す。
そして父の遺書をーー。
「あ、それと証拠品だと思うんですがーー俺、預かってますよ?調べます?」
「ーーあぁ、調べよう」
警官の目付きが鋭くなった。
家まで行き、俺は指紋をつけないようにハンカチでくるんでから持っていった。
それを警官に渡してから、数十分後。
「ーー斎藤秀二。殺人罪で逮捕する」
ーー何?何だって?僕が犯人??
「あの、俺がやったのは、藤田しげるや沢田昌平の顔に落書きしただけですよ?ーー「犯人」って」
「君の指紋もついてるじゃないかーー血のついた凶器なんて持って、よく関わってないって言えたな。もー少しマシ嘘はつけないのか?」
警察官は決めつけている。
俺が「犯人」だとーー??
ーーち、、違う。
俺はやってない!!俺じゃないんだ。
心の中で叫んでも、心の声は誰にも届かない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます