第22話 7-3
健吾は平静を装ったつもりだったが、うまく装えていないのかも知れなかった。
18時。
待ち合わせのその時間になると、スナックやバーが集合しているあの通りも人通りが多くなる。
通りすぎるすべての人が、自分を見ているような錯覚に陥る。
健吾は例の喫茶店に入っていく。
「待ち合わせなんだけど、、」
店員にそう言って、店内を見渡す。しかし、まだ太郎は来ていない様だった。
店員に案内されるままに、健吾は腰をかけてアイスコーヒーを頼んだ。
数分後、窓の外をぼんやりと眺めている健吾の元に、店員がアイスコーヒーを運んでくる。
それとほぼ変わらないタイミングで、太郎が到着した。
「お待たせ」
「とりあえずコーヒーでいい?アイス?それともホット?」
「アイスでいーや、あちーっ」
相変わらずの太郎だった。
まるで何事もなかったかのように振る舞っている。
「悪かったな、、急に呼び出して」
「あぁ」
「これ」
太郎は紙袋を差し出す。
持った瞬間、健吾はその重さに驚いた。
「どーやってこんな大金工面したんだよ?」
「俺にもいろいろとアテはあるんだ」
太郎は得意気に言った。
中身を確かめる。
それには本当に万札ばかりが入っていた。
「ーーこれでお前も共犯だ」
太郎のにやけた顔。
「一つ確認しておいていいか?」
健吾は聞いた。
「ーーなんだ?」
太郎は素っ気ない顔をして、ストローでアイスコーヒーをすすった。
氷が溶けて、色を失いかけているそれはもうコーヒーと呼べる代物ではなくなっていた。
「お前も共犯って言ったな?」
「あぁ」
「じゃ、俺以外にも共犯がいるのか?」
「もちろん」
「どーやって共犯にしたんだ?」
「簡単だよ。ーー弱味を握ればいい」
「以外と難しいだろ?」
「まぁな、、俺には簡単なんだ」
「例えば、健吾に持ってきた金あるだろ?」
声を潜めて太郎が言う。
「うん」
興味津々な健吾。
「あれを用意したのは俺じゃないーー」
「じゃ、誰が?」
「藤田しげるだよ」
健吾は黙って聞いている。
「そのお金を出させる事で、藤田しげるも共犯さ」
「なるほど」
「万が一、彼が共犯だと警察に話したとしても、どー見てもお金を出してまで共犯になろうなんてヤツはいないだろう?もちろん人を殺せば血が出るのに、彼のようにホームレスとして生活していれば、お金がなく、着替えられないだろう?」
「言われてみればーー」
「その為に彼にはホームレスのフリをしてもらってる」
太郎は得意気にそう言った。
「そんな形で、みんながちょっとずつ事件に関わっているのさ」
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