第4話

「棟梁ー!いるかーい?」


「はいはい。どうしたネ?」


「頼まれてたモノが出来たからよ。その報告がてら…一杯どうかねっと」


「そうかいそうかい。相変わらず仕事が速いネ、ありがとネ。息子も喜ぶヨ」


「その嬉しそうな笑顔…親馬鹿だねぇ」


「子どもは可愛いネ。あんたんとこも、そろそろ作ったらどうだイ?飯屋のトカゲの小僧に先越されたじゃないネ」


「うちはいいんだよ!その…まだ…二人でいいんだよ」


「はー…アタシが親馬鹿ならあんたは嫁馬鹿じゃないかネ?」


「そんなこたねぇよ!!」


「嫁さんが自分の羊毛を刈って編んでくれたセーターを、今も着てるオスが何言ってるのかネ?」


「これは!あれだよ!!せっかく作ったもんだし着ねえともったいないだろ!!そんだけだよ!!」


「興奮して鼻息荒くなってるネ…バレバレヨ」


「鼻息が荒いのはミノタウルスだからだよ!生まれつきなんだ!」


「はいはい、分かった分かったヨ」


「…ったく。あー…そんで、出来たもんだけどよ。本人に取りに来させな。オーガ用の大工道具なんて初めてでな。一回握らせてから調整するからよ」


「そうかい。明日にでも行かせるヨ。ありがとうネ」


「しっかし、なんでまたオーガの小僧を養子に?身寄りがねえって事で住み込みの弟子までは分かるけどよ」


「簡単な話よネ。一緒に暮らして、一緒に働いて、一緒に飯を食べて、一緒に寝て。それで家族じゃないなんて私が嫌だったのヨ」


「…習性ってやつかい?」


「いいや…多分違うヨ。いつかあの子はあたしの元を離れて一人立ちするのは分かってる…だから…違うヨ」


「そうかい…」


「まぁ、あの子は素直で覚えも良い。おまけにオーガだから力もある。案外その日は早くくるのかもしれないネ」


「いいや、そいつはどうかな?」


「なんでヨ?」


「この街のほとんどの家を手掛けた腕っこきの棟梁。あんたの背中を越すのは骨が折れるだろうなってな」


「こんなゴブリンのちっこい背中くらいひと跨ぎして欲しいものネ」

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