第2話

「おはようございまーす。配達に来たっス!」


「おっはよー。いつもご苦労様。そこに置いといて大丈夫だよ。後であーしが運んじゃうからさ」


「そっすか。んじゃ…よっこいしょっと…んんん…?なんすかこの紙?なになに『しばらく出前はお休みさせていただきます』ってえええ!出前しなくなるんスかー!?」


「ちょっ!?え?何それ!?あーし聞いてないし!…あ、もー!また勝手に決めたんだ!ちょっとー!ねー!降りてきてー!ねーってばー!」


「…何だ何だ?朝からぁ。俺はまだ…ん、おおう。配達ご苦労さん。俺に何か用なのか?」


「違います!用があるのはあーしだし!何これ!?まぁた勝手に決めたでしょ!あたし全然聞いてないし!お客さんも困るし!ていうか訳わかんないし!」


「そっスよー。何か事情があるんでしょうけど、突然出前しませんって…ちょくちょく頼んでる身としちゃ困るッス」


「いや、そうは言ってもな…まぁ…なんだ。その…何かあったら?ほら、危ないし」


「なんすか?危ないって」


「あ!何!?あーしの妊娠のせい!?もぉぉ!大袈裟だよ!まだ三ヶ月だよ?心配し過ぎだよー。産まれたらお金もかかるし、お腹大きくなるまでは行けるってー」


「いや…しかしだなぁ」


「え…え…妊娠って…え?奥さんが…っスか?」


「あーし以外に誰がいるの?」


「マジっスか…これはとんでもないビッグニュースっス。配達のついでにみんなに報告しなきゃ…」


「え…あ?おい…やめろ。そんな広める話でもないだろう…な?」


「いやいや、めでたい事はみんなで祝わなきゃっスよ」


「いや…いいから。落ち着け。な?そんな…は…は…恥ずかしいだろ…わかるよな?おい…」


「あーしはみんなに『おめでとう』って言って貰えると嬉しいなー」


「決まりっス!任せて下さい!今日中に知らない人なんていなくなりますから!『リザードマンとハーピーの年の差夫婦、熱い夜の末に子宝に恵まれる!』って感じっスね。これはテンション上がってきた!あ、もう次の配達に行くっスね。じゃ」


「まてまてまてまて!!言い方!言い方を考えろお前!!」


「そんなご心配なくー何かを広めるのは得意っスからー。ほら…オイラ何せ、ネズミっスからー」


「良い意味で受け取れねぇんだよ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る