第6話 小説 【NOVEL】 

ボクは昔、小説が大好きだった。

小説を毎日のように読んで、そして他のことを忘れられていた。

どんな悪いことがあっても小説を読んでその感情を忘れさせた。


これはボクがまだ中学生の頃の話




「ミチちゃん、今日はなんの小説を読んでいるの?」

「今日は恋愛ものの小説だよ。この主人公が2人の女の子に迫られる、いわゆるハーレム系のやつね。」

「へ〜。」


この子は坂倉さかくら凛奈りんなちゃん、私の唯一の友達。



私は学校では根暗で、たまにいじられたりする。

そんな私を変えてくれたのがリンナだった。





「おーいヨシダ。今日も恋愛小説読んでんの〜?」

「浅倉さん何か悪い?」

「悪いに決まってんじゃんっ!根暗ちゃんが教室にいるだけで空気が悪いのになんで小説読みまくってんの?頭おかしいんじゃない?」

「………」


この人はボクを毎日のようにいじってくる。

浅倉あさくら茉莉まり、彼女の名前だ。


「おいマリ!ミチちゃんに何してんねん!」

「げっリンナじゃん。」

「げっとはなんだ!げっとは!」

「この根暗が教室にいることが不快なのよ。」

「マリ…あんたがそういうやつとは思ってなかった…」


2人は幼馴染で仲がいいらしい。

でも私が2人の仲を引き裂いてしまった。



「ごめんなさい、リンナちゃん…ボクのせいで2人の仲が…」

「大丈夫大丈夫!ミチちゃんいじめるやつとなんか友達でもなんでもないから!」

「リンナちゃん…」


この時、なぜ彼女が友達を捨ててまで私を助けるのかわからなかった。




私が変わることができたきっかけは一つの体育の時間だった。


「ミチちゃん!めっちゃ足早いじゃん!」

「わっ、ビックリした…リンナちゃんか…」

「ミチちゃんどうやったらそんなに足が早くなるの?」


彼女の言葉に少し疑問を抱いた。

彼女は陸上部で足がすごく早い、それもボクの何倍も。


「リンナちゃんには敵わないよ…アハハ…」

「ミチちゃん運動部じゃないのにどうしてそんなに足早いの?」

「まぁ…何かしてると言ったら…毎朝走ってるかな。」

「毎朝?」

「うん。ボク、家が遠いけどバスで行ったら遠回りで遅くなるし、かと言って電車とかで行く距離ではないしで結局、毎朝走って学校に行ってるの。」

「そうだったんだ!あっだからいつも朝にホームルームギリギリで学校に来るんだ。」

「そう。結構走ってるからそれで早くなったのかなぁ?」


その時、リンナちゃんから一つの言葉が来た。


「ミチちゃんも陸上部こない?」

「え?陸上部?」

「うん!実は、私たちの代の部員、人が足りてなくてね、それでよかったらミチちゃんもどうかな?って、ミチちゃんならもしかしたら大会で優勝できるかもしれないし!」

「リンナちゃんがそこまで言うなら…」



ボクは断れずに承諾してしまった。



〝もしこの時ちゃんと断っていればあんなことにはなっていなかった〟

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