10 ジュリアス・ファルスター
「おはようございます。ローズ様…今日は、気持ちのいい朝ですよ!」
「おはよう…ジュリアス……って…わっ……ちっ…ちょ…やめて…くすぐったいよ…!」
首元にくすぐったさを感じて目を覚ましたローズは、蕩けそうなほど甘い笑みを浮かべながら、朝から色気をダダ漏れさせているジュリアスにクラクラしながら目を覚ました…
(おい。おい。ジュリアスさん…何をしていらっしゃるんですか??朝っぱらから、無駄に色気を振り撒いて幼女の首筋を撫でるなんて、どんな変態さんなんですか?)
爽やかな朝日を背にして、朝から出しちゃいけないような色気を、無駄に幼女に振り撒きながら、ジュリアスは指背でローズの耳裏から首筋を撫でている。
「ふふっ…今日も朝から可愛らしいですね。今日は、天気も良いようですし、着替えて朝食を食べたら、私と一緒に庭で遊びませんか?」
「遊ぶ!!!急いで着替えてくる!」
今まで羞恥に悶えていたのにジュリアスの言葉で飛び起きたローズを楽しそうに微笑みながらジュリアスは制止する。
「ふふっ…コラ…!コラ…!1人で降りたら危ないですよ!!ベッドから落ちたらどうするんですか??あぁ……ローズ様は…今日も元気ですね!」
ローズに激甘のジュリアスは、急いで、ベッドから降りようとしたローズを捕まえて抱き上げると、ローズの鼻の頭を一度チョンと指で突っついて笑顔で嗜めそのまま、クローゼットに向かい歩いて行く。
(うぉーー!!今日も、激甘ですね!ジュリアスさん!!たとえ…ベッドから落ちたとしても、フカフカ絨毯の上じゃ、かすり傷ひとつ出来やしませんよ!!そのまま前転して起き上がれるくらいのスペックを私は持っていますけど……)
今日も無駄に元気なローズだった…
………
「今日は、どの洋服に致しましょうか?この、オレンジのワンピースも髪色と合わさって可愛らしいし、こっちの、水色のフリルのドレスも可愛いですね。あぁーでも今日は、庭で遊ぶので動きやすい、この薄紫色のシンプルなワンピースにしましょうか?本当にローズ様は何を着ても可愛らしいですね」
ジュリアスは色気全開でローズに洋服を合わせると、その度に嬉しそうに褒め称えまくる……
「あっ…ありがとう…こっ…このお洋服かわいいね!」
ジュリアスに矢継ぎ早に褒められて少し押され気味のローズにジュリアスは更に追い討ちをかけ……
「ふふっ…ローズには負けますけどね!
あぁ…でも、ローズ様の可愛さを、一層引き立たせてくれる素敵なドレスではありますね。私の髪色とお揃いですよ!ふふっ…」
(ルイ……顔が死んでるよ……!!気持ちは分かるけど……気持ちは分かるけども…!!)
ジュリアスは、手早くローズを着替えさせると、鏡台の前に座らせて、髪の毛をセットしてくれる。
ジュリアスは、手先がとても器用なので、肩までしかないローズの髪の毛も、毎回簡単に編み込んで、可愛らしくセットしてくれる。
今日のローズの服は、全体的に薄紫色の膝丈のワンピースで、首元には白の丸襟、銀糸と青の糸で、袖と裾のラインに複雑な刺繍をされたシンプルな格好である。
髪型も、左右の側頭部から太めに髪を取り、複雑に編み込んで、後ろに回して一纏めにしてパールの付いたお花のバレッタで留めている。
「うわーーー!凄く可愛いね!!!ジュリアスありがとう!」
ローズは凄く可愛い出来に、嬉しくなってジュリアスに向かって破顔した。
「うっ……!!はぁ……本当…ウチの子が天使すぎてマズイ!!そんなに可愛らしい事を言って、私を殺す気ですか?このままだとトキメキ過ぎて心臓が持ちませんよ!!」
(いやいや〜…!!ジュリアスさん…人はそんな簡単には死にませんよ!しかも私は、貴方の娘じゃありませんしね……!!ルイも…そんな目をしてないでジュリアスに何か言ってよ!!!)
ローズの可愛らしく純粋に喜ぶ様子に、大袈裟に胸を押さえ悶えていたジュリアスも、次の瞬間には、素早くローズを抱き上げて食堂へ向かい歩き出す。
食堂へ向かう間もずっと、ローズを見ながら可愛い、可愛いと何度も呟いて微笑んでいるのだった。
(恥ずかしすぎる……)
ローズを抱き上げたまま、ジュリアスが食堂に入ると、クロード達は既に席に着いていて、ローズに向かって微笑んでいるジュリアスを見た途端 眉を寄せ始める。
「おいっ…!!ジュリアスが笑ってるぞ!!」
「そうだな…!!あんなに機嫌がいいジュリアスには、未だに慣れないよ……幼い頃でもあんなにニコニコしてた事あったか??」
「誰か1人、嫌いな人間でもシメてきたんじゃねぇーか?」
若干1名ほど失礼な発言をしている方がいるようだが、皆ジュリアスの上機嫌に戸惑いを隠せないようだった……
「皆様…失礼ですよ!!ローズ様…彼等の言う事を信じてはいけませんよ!彼等は私がローズ様を独り占めしているのが面白く無いだけなのですから!!」
「……はい……」
ジュリアスの有無を言わせぬ言葉と輝く様な笑顔に、ローズは少し戸惑いつつも小さく返事をする……
クロード達はローズを保護してから毎日、上機嫌で笑顔のジュリアスに何故か怯えているのだった……
ローズは逆に笑顔じゃないジュリアスを知らないので、いまいち実感はないのだが、クロード達の意見が何となく分からないでもなかった……
朝食を終えたジュリアスは、ローズを抱き上げ庭へ出ると、薔薇の庭園とは別の庭へ向かい出した。
そこは、奥の芝生の上に大きな木が生えていて、その周りに、色々な種類の花が植えてあるカラフルな園庭だ。
ジュリアスは、その木の根元に敷物を履くようにルイに指示すると、ローズをそっと下ろした。
「いつ見てもココはキレイだね!!日向ぼっこ……凄く気持ちいい!!」
「ふふっ!!私もローズ様と一緒に居られて、とても楽しいですよ!!ローズ様と出会えた事が、私の人生で一番の幸運で……」
「おい!!なんか飲むか?」
ジュリアスのローズへの告白を遮ったルイを、ジュリアスは軽く睨みながら嗜め始める。
「コラ……ルイ…!口の利き方に、気をつけなさいと、いつも言っているではありませんか!しかも私のローズ様に出逢えたことへの感謝の気持ちを邪魔をするなんて…!」
(ルイ…!ナイスーーーー!!!今日、一番いい仕事したよ!!これからも、ちょこちょこ頼むよ!! 私の平静の為にも!)
視線でルイに感謝するも、全く気づかないルイはジュリアスの小言など気にも留めずに淡々とお茶の準備を進めている。
お茶の準備が終わりローズの前にクッキーが並べられるとルイもローズの横に腰掛けた……
「ローズ様……美味しそうですよ……!ほら…口を開けて………」
クッキーを一つ摘んだジュリアスは、妖艶な笑みを浮かべたまま自身も軽く口を開け、ローズの唇を見つめると食べさせようとしてくる……
(イヤーーー卑猥!!!なんだろ…??いつも思うけど、ただ、幼女に食べさせようとする仕草なのに、ジュリアスがやると、とてつもなく卑猥な感じになる…口を開けるのも恥ずかしい……!)
「ほら……どうしたんですか??クッキー要りませんか?」
「……いただきます……」
恥ずかしがりながらも少し上目遣いで渋々、口を開けたローズは、クッキーを頬張った。
(ん〜美味しい〜〜〜!!程よい甘さと、サクッとした歯触り!!何枚でも食べられそう!!!)
ローズは、クッキーを幸せそうな顔で味わっていると、お返しに、ジュリアスに食べさせたらどんな反応をするのかが気になった。
「はい!ジュリアス!!!あーん!!」
ローズが一つ摘んで差し出すとジュリアスは優しく微笑みパクッと咥える…
「ふふっ!!美味しいですね…ローズ様が食べさてくれると、より美味しく感じます!!」
(全然ダメだ!!!幼女のアーンじゃ…大人のイケメンには全く響かない!!!悔しい……! !!いつか絶対、いつも冷静なジュリアスを狼狽えさせたい!!!)
ジュリアスに全く響かなかったローズは、懲りずに今度はルイに食べさせた。
「ルイ!クッキー美味しいよ!!はい!あーん!!」
ルイにも一つ摘んで差し出すと、ルイも何てこと無いように大きな口を開けてパクッと食い付いた。
「ありがとう!ローズ様!これ美味しいな!」
(やっぱりダメだ!!この……幼女の体が憎い…!!成長したら絶対、美少女になるのに!!!あわよくば…前世には、欲しくてたまらなかった胸が欲しい!!豊満な胸を携えてみたい!!そしていつか絶対、ヤツらをギャフンと言わせてやる!!)
硬い誓いを胸に秘めたローズは、心の中で拳を握りしめた……!!!
……
……
お茶も飲んで一息ついたローズは、手持ち無沙汰からお花の冠を作ろうと花を編み出し始める……
だが…何せ前世の時は活発な子供で、小さい頃から、女の子達と、おままごとや花冠を作るより、男の子達と、朝から晩まで駆け回るのが大好きだったローズは、一向に花冠が作れない……1人で悪戦苦闘していると、横からジュリアスが、カラフルなキレイに編まれた花冠をローズの頭に乗せてきた。
「あぁ〜!!とてもキレイですよ!ただ、可愛すぎて他の人には目の毒なので、私の前以外では、絶対にしてはけませんからね?」
「………ありがとう……ジュリアス……」
とんでもない殺し文句を言うジュリアスは、ローズには常に紳士でレディファーストである。
ローズにはとても優しいジュリアスだが……本来は女性を嫌悪しているのだった。
クロードとは父親違いの母を持っていたジュリアスだが、父親が平民だった為に、ジュリアスが産まれてから何年か共に過ごしたものの、公爵家の男性との間にクロードが産まれて用済みになると早々に飽きられ、邪魔になった父親を…人を使って殺害されてしまう。
それを幼いながらも間近で見ていたジュリアスは、女性に対してとてつもない嫌悪感を抱いている。
いつか必ず復讐すると誓い、大人になって力をつけた後、事故を装い復讐したジュリアスだったが何故か気持ちは晴れなかった……
クロードも、その事に気がついているのだが、敢えて何も言ってはこない……!
2人には、2人しか分からない絆があるようだ……
ローズの事は…まだ幼い上に、彼女の状況が、自身の境遇と多少リンクする事もあるようで、保護されて初めて会った頃から強い愛情を持っているようだ。
この世界の女性では珍しく純粋で素直な身寄りのない幼い少女を、自分が守らなければと強く思っているようだった。
ジュリアス自身は今のところローズに対して家族愛に近い愛情を抱いている。
***
「なぁ……ローズ…!!!頭の上の花冠から虫出てきてるぞ!」
「ギャーーー!!!」
今日も平和な公爵家である……
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