第7話新しい感情を覚えたホムンクルスちゃん
開いた蓋から、何かが勢いよく飛び出してくる。
思わず伸ばした私の両手の上に、その何かが乗っかった。
ずしりとした感触。
そして、キラキラとした輝き。
白、いやそれは白銀と呼ぶに相応しい輝きだ。私が生まれてこのかた目にした中で、最も美しい色をしている。
その手の上のもちもちとした丸っこい何かが、ぷるぷると震えたかと思うと、にゅーんとその体を伸ばす。その延びた体の一部が、そっと私の頬を撫でる。
ひんやりとして気持ちいい。
「きれい……」
そのあまりに美しい色に、声がもれる。それは、怒り以外では初めて感じた情動だった。
「あなたは、なんですか?」
思わず、話しかけてしまう。
「ぷぅ。ぷぅ」
その目の前のふるふるとした存在から、まるで返事のような、そんな音がする。どこからか空気を取り込み、声のように音を出しているようだ。
「ぷぅ、ですか」
ゆっくりと手で握るようにすると、そのもちもちふわふわとした感触が伝わってくる。
そして私の手の動きに合わせて、ぷぅの体の表面にさざ波のように、光の色合いが生まれる。
白銀の体表面に生まれたその色のグラデーションは常に変化し、思わずうっとりと見とれてしまう。
「どうしましょう。この子」
「ぷぅ。ぷぅ」
ぷぅのその声は、まるで私の問いに返事をしているかのようだ。それだけではなかった。
私が手にしたままのゴブリン達のスキル・ラビッシュを、そのみょんと伸ばした体で指し示してくる。
「ぷぅぷぅ、ぷぅ」
「お礼を言っているのですか?」
「ぷぅー」
──もしかして、培養槽を殴っていたゴブリンから助けた事で、お礼を言っているのでしょうか。
「どういたしまして」
「ぷぅーぷぅ」
「……ふふ」
その仕草に思わずもれた吐息。なんだろうと、今の自分の反応を不思議に思う。
「一緒にいく?」
気がつけば、私は、そんな言葉をぷぅに語りかけていた。
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