第九夜「愛の星」

 地球人類は、一般的に人と人とを結ぶ最少単位は愛で有り最大単位も愛で有ると認識している。口にしたり文章に直接書いたりすると、何かむず痒い感覚が有る単語だが、その響きに共感した結果の感覚と言えなくも無い。

 若いイーグルの両親は今でも地球で今も暮らしている。かなり長い時間、会っていないがとこ時と独近況報告のメールと画像を見ながら、元気で暮らしていることを確認し、それをよりどころに今日も暗く冷たく懐の深い闇の中に、その身を浮かべ、寡黙に宇宙の探査作業を行っている。

 暫くして彼は、甘くほのかに芳しい感覚に出遭った。

 その感覚は、懐かしい様な、くすぐったい様な不確かな感触だった。どうやらこの感覚は個人から発せられているのでは無く、男女のペアにより発せられている物の様だ。しかもその感覚は若々しく瑞々しく感じられた。

 イーグルは思い切って彼等に話しかけてみた。

「こんにちは…」

 話かけては見たものの、何を話して良いか分からず、イーグル自身が戸惑った。しかし、その問いに彼等は返事を返して来た。

「やあ、こんにちは」

「あら、こんにちは。どなたなの?」

 二人が答えてくれた事でイーグルも少し緊張から解放されるのを感じた。

「僕の名前はイーグル。地球という星に住んでいる。僕達は物理的に宇宙に出る方法を探しているんだ。もし、君達の星が、その方法を知っているのなら、その方法を教えて貰いたいんだ。」

「まあ、大変な御仕事をしてるのね。」

 イーグルを労う感情と同時に女性と思われる意識が先に帰って来た。

「宇宙に出る方法か…」

 今度は男性の意識が返ってくるそして、

「私達の星は、残念ながら宇宙に得る事は諦めてしまったんだよ。我々の太陽系の中を行き来してはいるが、それ以上遠くに行く事も、君達見たいに探査する事も止めてしまったんだ。」

「何故だい?何故止めてしまったんだい?」

 イーグルは不安げに問いかけた。

「我々の星も時間と距離の壁を超える事はできなかったんだ。だから、この星や人類を愛する事で生き延びる術を探そうとしてるんだ。だから君に教えてあげる事は何も無いんだ。」

 イーグルは思った。平和で愛する事を知る文明が宇宙に出られないのは皮肉な事だと。しかしそれはそれで幸せなことかもしれない。なぜなら、厄災に襲われないからだ、平和だけを願い愛だけを求める。少し物足りない世界かもしれない。

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