天空七百年

しんめ

寝坊助さん

ゴォン…ゴォン…


鐘の音が辺り一面に重く響き渡る。


始まりの合図。


同時に家々の扉が一斉に開け放たれた。

すぐに住人達が表に飛び出す。

彼らの目は好奇心の輝きに満ち溢れている。

誰も彼もが、我先にと鐘のある方向へ走り出す。

これから起こる出来事が余程待ちきれないらしい。



ゴォン…ゴォン…


その野太い音は、寝坊助な少女の耳にまで入り込んできた。


「うぅん」


呻き声を漏らし、耳障りとばかりに寝返りを打つ。


「リディア!リディア!起きて!」


彼女に追い討ちをかけるように、小さな家の戸が激しく叩かれた。


「何してるの!早く!」


少女を急かす怒鳴り声。

しかし、心地よい眠りの世界に浸っている彼女には届かない。


「この寝坊助!今日が何の日か忘れたの!」


全く、騒々しい。

このカナリアみたいに高い声はアッレーグラね。


親友の呼び声に心の中で悪態をつきながら、毛布に深く顔を埋める。


だが次の瞬間、友が放った一言が彼女を現実に引き戻した。


「今日はディボータよ!」

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