ペンギン村の怠惰なペンギン
仲仁へび(旧:離久)
第1話
俺は、観光地となったこのペンギン村のナンバーワンだ。
なんのナンバーワンって、なまけものの、かな?
「あ、ぺんぎんだ!」
「かわいいー」
「こっち向いて!」
俺は、やってきた観光客の人間にあいそうよく、よちよち歩きしてアピール。
お尻ふりふりも忘れずにな。
「ペンギンの餌だって、これやってみる」
おっ、さっそく餌ゲットか。
今日は、早くありつけそうだ。
うまくペンギンらしさアピールできたようだな。
しかし、そんな事をしてるのは俺だけだった。
他のペンギンは住みかにこもって、工作に夢中。
どいつもこいつも、熱血だ。
「角度が足りない!」
「浮力が足りないでござる!」
「モーターが動かない! 調整だ!」
俺のいるペンギンの村には、今一大ブームが到来していた。
空を飛ぶペンギンが現れた事で、みんな憧れを持つようになったのだ。
ペンギン用のツバサ製作に励んでいる。
蒼穹の空を見上げては、毎日毎日飽きもしない。
ペンギンは普通は、飛べないもんなんだよ。
あいつは特別。
刀で剣風をおこして飛ぶとか、普通できないから。
トリだけどとべない。
それがペンギン。それが個性でいいじゃねーか。
なんてぼやいてたら。
「トリとしてのプライドがあるんだよ。俺達だって飛べるなら、飛びたいさ」
とか熱血村ペンギンに言われた。
ふーん。そんなにいいもんかね。
飛ぶって。
俺達には海があるじゃねーか。
ないものねだりするより、身近なもんで満足しとこうや。
「そんな事いって、昔あんたが飛ぼうとしてツバサを怪我したの知ってるんだからね」と通りすがりの村ペンギンが発言。
なっ、何でそれを知ってやがる。
「前できなかったから今も出来ないなんて、だれが決めたの。成長した今ならがんばれば飛べるはずよ」
どこまでも熱血な村ペンギンが去っていった。
頑張れば、俺だって飛べる、か?
いつかの夢を再び、この手につかめる、か?
「うわー。ツバサがおれた!」
「エンジンが火を吹いたぞ! あちちちっ」
「ぎゃー、穴があいてる!」
いや、やっぱ無理。
手先が器用な人間とかならともかく、俺らペンギンだしな。
ペンギン村の怠惰なペンギン 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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