【Endless Story Online】~終わりなき物語~

紅/紅(コスモ)

0冊目 ~始める準備~

第1話 学校にて(現実side)

 4〇×△年、私立綴ヶ丘つづりがおか高校の教室にて本を読む一人の男子高校生に話しかける者がいた。


 ――― 栞暖SIDE ―――

 教室で本を読んでいた時のこと、

「ねーね、栞暖はさ【Endless Story Online】っていうゲーム知ってる?」

 そう話しかけてきたのは、高校入学してから、二か月でクラスのみならず、学校全体で人気者になりつつある、刀堂聖護だ。

 イギリス人と日本人のハーフであり、金髪碧眼のイケメンという、まるで絵本に出てくる王子様といった容姿である。さらに、文武両道であることや本人の性格が関わりやすいせいか、既にファンが出てくるよう感じに人気が出ている。そんな人気者である聖護がどうしてこちらに話しかけてきたのかは、シンプルに家同士が隣である幼馴染だからである。

「知ってはいるけど、やれてないよ。うちの修行が厳しかったせいで碌にゲームをしたこともなかったし。やったことがあるのは、トランプくらいじゃない?」

「というかほんとにゲームやれてないんだね。今の時代では電子機器が主なゲームばかりなのに、トランプって。それ、僕たちが小学校低学年の時に遊んでたことじゃないよね?」

 聖護が苦笑しながらも聞いてくる。

「悪いかよ、こっちは聖護とは違って半ぼっち状態だし。聖護以外とは事務連絡ぐらいでしか話してないし。」

「さらっと悲しいこと言わないでくれない。栞暖もコミュ障というわけでもないんだし、普通に話しに行けばいいのに。」

「あいにくとそこまでして話したいわけでもないしね。テレビもあまり見れてないせいか何話しているのかわからないし、一人でいるほうが何かと気楽だし。本の世界にのめりこむほうが楽しいってのもあるけど。」

「あはは、まあ栞暖の事だしそう言うと思ってたけどね。まあ、サービスが開始してから二ヶ月たつけど、今からでも一緒に遊ぶことってできない?」

「いや、勉強とかもしなくちゃならないし、修行とかもあるし無理じゃないか?」

「あれ、栞暖って両親とした約束って覚えてないの?」

「約束?なんかあったっけ?」

「ほら、小学校中学年ぐらいのときに、『高校入学までに余裕で大学卒業できる能力と、今行っている修行を終わらせることができたら、一人暮らしをしてゲームをやってもいい?』っていう約束事。してなかったけ?」

「あー、そういえばそんな約束してたっけ。ってことは、始まって二か月間は無駄にしてしまった感じ?というか母さんそんなこと言わなかったじゃん。母さんは記憶力いいし、意図的に黙ってたでしょ、これ。」

「あはは、やっぱり忘れてたか。勉強やら修行やらで頭の中空っぽになりそうだったしね。僕も剣の修行だけ受けたけど、大変だったし。約束も飛んでしまうのもしょうがないかな。」

「確かに大変だったしね。そうなると帰ったら、母さんにこのこと伝えて、さっそく始める・・・ために買おうかな。」

「うん、それでいいと思うよ。そうそう、僕このゲームのベータテストに参加できてさ。」

急に聖護が驚くことを言ってきたのでびっくりした。

「あれ、それって確か三十万人に一人とかの確率じゃなかったけ?」

「うん、そうだよ。ダメもとで応募してみたんだけど、選ばれましたって通知が来てびっくりしたんだから。ベータテストは五か月くらい前のちょうど高校入試の試験時期とかぶっちゃてて何日か遅れてから始めたんだけどね。」

「へー、どうだったの?フルダイブ型のVRは2年前から始まったのはかろうじて知っているけど、その時はあまりリアルに感じられないとかいう感じで、酷評だった感じだったニュースがあったような気がするけど。」

「そうだね。2年前はあまりよくない感じだったけど最近になって、やっとリアル感が出てきてたんだけど、【Endless Story Online】はひと味どころかふた味は違った感じだったよ。このゲームを作った会社って、〈カルパスプロダクション〉っていう最近できた会社らしくてね。【Endless Story Online】はAIがゲーム自体は管理してくれているみたいだよ。運営の人とかは、イベントとかを考えているんだろうね。」

「ふーん、とりあえず帰ってからかな。機器も頼まないといけないし、その機器も人気だし、しばらくはできないだろうけど。」

「あ、そのことなんだけど、ベータで最後にPⅴPの大会があったんだけどね、TOP4に入れた人に追加で新しい機器をもらえたんだよね。それで一緒に少しだけアイテムがもらえる招待コードももらえたし、それで一緒に遊べない?」

「ほんと?もらえるんだったらいいけどほんとにいいの?売ったらすごい値段しそうだし、結構高いものだった気がするし。」

「うん、大丈夫だよ。そしたら今日のうちに渡しとけば明日からは、祝日や土日月による連休で、五日間の間は一緒にできるだろうしキャラメイキングだけはしておいてね。」

「うん。RPG自体が初めてだから何したらいいかわからないし、メッセージでやっておくべきことや気を付けたほうがいいことを教えてくれるとありがたい。」

「了解。もしやっていい許可がおりたら、メッセージ送ってね。渡すのはいったん別れてからでも平気だし、許可をもらってからになると思うけどね。はじめのうちは、一緒に遊びたいしね。」

「ん。その時は頼むわ。」

 ―――キーンコーンカーンコーン―――

「ほら、チャイムなったし席戻りな。」

「うん。そうするよ。またあとでね。」

聖護が席に戻ったのを見てから出席番号の順番になったおかげで窓際になった席から、空を眺める。

(ゲームか。ほとんどしたことないし、まずは母さんに聞いてからになると思うけど、楽しみだな。)

ゲームを楽しみにしているようなワクワクしている自分の顔が窓に映り、思わず苦笑してしまった。

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