第12話
ロベールとめいっぱい遊んでから、私たちはそれぞれの帰路についた。
ミサのある日は休日と決めていたから、お父さんもきっと村人たちと話したりしていただろう。多分、だけど。
「ただいまー」
「お帰り、メイベル。楽しんできたかい?」
「うん! 楽しかったよ」
ロベールと遊んだ内容を話すと、お父さんは楽しそうに聞いてくれた。こういう平和な時間を、もっともっと確保したい。そのために、やるべきことをしないとね。
休日ではあるけれど、お父さんに文字を教わった。この世界、貴族も平民も普通に文字の読み書きができる世界なのよね。学校に通っているか、親から習っているか、はたまた別の方法か……人それぞれ。確か、ロベールは村長から習っている。
「メイベルは勉強熱心になったねぇ」
「そう?」
文字の練習をしていると、お父さんがそう呟いた。……そうかもしれない。だって、時間は有限だもの。……日本で、それも十六歳で命を落としてしまったから、やりたいこと……全部中途半端だったんだよね。
まさか病気になるなんて思わなかったし……。だから、かな。メイベルの身体は健康だし、運動神経もそんなに悪くない、と思う。勉強はこれからしていけばいい。まだ五歳なのだから。十四歳までにいろいろと知識を得て、冒険者になって味方を作り、この村を守るんだ!
きっと、大変だと思う。それでも――わたし、やれることをやりたいのよ。
日本で出来なかった分、この世界で。……この村唯一の生き残りになるのはイヤだもの。生き残るのなら、みんなで生き残りたい。その道を、探したい。
お父さんやロベールたちを見ていると、そう思うのよ。
夜になって、夕食を食べて、お風呂に入って、ベッドに横になるとすぐに眠気が襲ってきた。
目を閉じるとあっという間に眠りに落ちた。
☆☆☆
――ふわふわと、意識が浮上するような感覚。ただ、本当にふわふわしていて、これはもしかしたら夢なのかな? と思った。
辺りをキョロキョロと見渡すけれど、ただ闇が広がるだけだった。なにも見えない。
「……なんの夢なの、これは……」
ぽつりと呟くと、どこかからか声が聞こえた。
「へぇ、ここが夢の中だって自覚しているんだ」
「誰っ!?」
思わず振り返る。誰もいない。……もう一度辺りを見渡すと、「こっちこっち」と呼ばれた。
こっちってどっちよ!?
「ほらこっち!」
ぽわ、と淡い光が現れた! 球体のような光が数個、ぽわぽわと浮いていた。
「お前を呼んでいるんだ、付いてこい」
「え、ええ?」
「知りたいんだろ、ほらこっち!」
ぽわぽわと光が道を作っていく。……このままここにいても仕方ないし、ついて行ってみよう。知りたいことはたくさんある。光に導かれるまま、歩き続ける。どこに向かっているのかさっぱりわからない。
……どこまで歩いたのかも、わからない。ただひたすらに光を追いかけるように早足になり、最終的には走っていた。光に導かれて走るって、どういうことなのか。なんだか青春のいちページみたいで楽しくなってきた。
走って、走って――辿り着いたのは――……うん、暗闇。……ここで誰かが私を呼んでいるってこと? 左右上下確認してみたけれど、そこにあるのは闇だった。……ええ、と。これどうすればいいのだろう。道案内をしていた光もいつの間にか消えていた。
「……えええ……?」
困惑して声が出た。どうすればいいのか悩んでいると、「来るぞ、目を閉じろ」と耳元で言われた。
え? と思ったけど、言われたとおりに目を閉じる。すると――閉じていてもわかるくらい、眩い光が辺りに満ちた。光が収まり、恐る恐る目を開けると、そこにいたのは――……。
とても神聖な、そしてとても美しい人が立っていた。あまりにも美しくて、神々しさを感じる。……一体、誰なのだろう? ドキドキと鼓動が早鐘を打つ。
その人は……果たして本当に『人』なのだろうか? だって後光が差している。その人自体が光っているように見えたんだ。
「……あなたは、一体……」
「ふふ、初めまして、メイベル。それとも――日本の名前で呼んだ方が良いかしら?」
――私のことを知っている、ということは――もしやこの女性は――。ごくり、と思わず喉を鳴らした。そのことに気付き、女性は優雅に微笑む。
「……この世界の、神さま――……?」
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