第48話 決意
「サクラさん。祖母の優未は、霊王と戦ったのですか?」
『はい……。約千体の精霊が攻め寄せて来ました。それを迎撃しています』
「今の僕と比べるとステータスはどうでしょうか?」
『優未さんは、全て80%まで上げていました。そうしないと、霊王とその側近には勝てないと判断したので……』
厳しいな……。
『優未さんは、その後、数年ほど動けなくなりました。
その間に、上げたステータスを下げる方法を発見しています。
ただし、ステータスを上げ過ぎて負った傷は、ポーションやエリクサーを用いても治りませんでした。
魔導具を身に着けることによって、日常生活を送れるくらいにはなりましたが、余りに痛々しく……』
ステータスを下げられるのか……。
ただし、限界を超えて自ら体を壊す。そして、治す術がないと……。
考えてしまうな。
霊王は、神樹を襲いに来ると思う。
多分、分散して攻めて来ることが予想される。しかも、神樹は複数あるし。
祖母は、神樹を守った。僕も守らなければならないと思う。親しい人がいなくなってもだ。
そのためには、ステータスを上げる必要がある。
10%から30%に上げただけで、別人になったんだ。
75%や80%にしたら、どうなるかは目に見えている。 決断の時だな……。
祖母の家に帰って来た。雨はまだ降り続けている。
その日の内に、社長の真人さんに電話を入れた。
僕の決意を伝えなければならない。
そして、この一ヶ月の感謝を伝えたかった。
真人さんからの返事は、『明日会おう』だった。
だけど、もう戻ることは出来ない。
大切なものを切り捨ててでも、守らなければならない時が来たんだと思う。
◇
朝起きて、身支度を整える。
スーツを着てみたけど、小さかった。着れなくはないんだけど、この一ヵ月間で、僕の体も変化していたみたいだ。ステータスを振っていないけど、変化し続けていたんだな。でも、そうか……。精神の変調は、自覚していた。体系も少しずつ変わっていたのかもしれない。革靴に足を無理やり入れて祖母の家を後にした。
自転車で、サイオン製作へ向かう。
佐藤係長に挨拶をして、社長室へ通された。
「本当に申し訳ございません。どうしても外せない用事が出来てしまいました。
バイトでしたが、ここまで良くして頂いたのに、こんな結果になってしまい……」
「深くは聞けない。だが、危ないことをしているわけではないのだよな?」
「はい……。少し遠くで困っている人がいるので、手助けに行きたいと思います。
祖母の頼みでもありましたので、どうしてもそちらを優先したいと思います」
真人さんは、ため息を吐いた。
「……そうか。引き止めることは出来ない。だが、そうだな。戻って来たら連絡くらいは欲しいかな」
「数年くらいかかりそうです。それでも良ければ……」
「ああ、構わないよ。全てが終わったら顔を出してくれ。
優未さんの孫だからというわけではない。私は君を気に入っているんだ」
言葉も出ないよ。深く一礼する。
それと、用意していた物をテーブルに置いた。
「これは………、何かな?」
「祖母の家を掃除した時に見つけました。何かの薬草だと思います。
これを探していたのではないでしょうか?」
真人さんが、驚いた表情を浮かべてテーブルに置かれた袋を開けた。
そして、確認する。
「そうだ。この匂いだよ……。優木さんの漢方薬の匂いだ!」
予想は合っていたか。
「厳重に保管されていました。湿度対策もされていたので、多分まだ飲めると思います。
どうぞ、佑真さんに飲ませてあげてください」
真人さんは、固まっている。余計な一言だったかな?
「……ありがとう。しかし君も優未さんと同じく不思議な感じがする。
やはり、あの人の孫なのだな」
数度会っただけの人と比べられてもな……。
でも、色々な人を助けたのが、祖母なんだろう。僕も同じでありたいと思う。
「それでは、これで……。今までありがとうございました」
「……麗華には会って行かないのか?」
ズキンと心が痛んだ。
「麗華さんとは何もありませんでした。ご飯を作って貰っただけですので。
でも、美味しかったとお伝えください」
「……そうか。また会おう」
握手をして別れた。
その後、逃げるようにログハウスに向かった。
◇
ログハウスで、ネクタイを取り、スーツを脱いだ。スーツは、マジックバッグへ。
深呼吸する。
「サクラさん。霊王はまだ進軍して来ませんよね?」
『彼等にも準備が必要ですからね。進軍は、1~2週間後だと思います』
もう後戻りは出来ない。
心を静めた。
「ステータス」
僕は、魅力以外の項目にステータスポイントを割り振り、筋力・体力・速度・知力・防御力を70%にした。
今回は、ここで気を失った。
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