第41話 魔物を統べる者3
「僕にも納得出来る話をしてくれるのであれば、アンネリーゼさんをお任せしたいと思います」
「うむ。何でも聞いてくれ」
「彼女は、どういったスキルを持っているのですか?」
「ユーリと近いスキルだな。〈称号:解読師〉は文字から想いを読み取れるのだろう?
この娘は、万物の声が聞こえる。
意味不明な言動と、白い髪で気味悪がれたみたいだがな」
ふむ……。
『面白い』と言っていたので、何かしら知っていそうだとは思ったけど、期待以上の回答が来た。
アンネリーゼさんは僕の上位互換というわけか。少し分かった気がする。
それと、レオンさんには、生理的嫌悪感がわかない。
ログハウスの近くの魔物とは、明らかに違う。
先ほど進化と言ったので、その辺が関係していると思う。
「レオンさんは、祖母と敵対していたのですか?」
「先代の〈根源なる者〉が人族の領土に攻め込んだ時に、会ったことがある。即座に逃げたがな。
それからは、ユーミを遠くから見続けた。その時に千里眼のスキルを手に入れたんだ。
ユーミは、短期間で人族を纏め上げてしまった。それを真似たら、俺も〈根源なる者〉に選ばれた」
秩序と法律を真似たのかな?
魔物だけど、それだけの知性があるのか。そして、従わせるだけの力もあると。
街道を見ると、秩序ある動きが見て取れる。
これは、種族が違うだけで、人の国と何ら変わらないと思う。
法治国家……。今ならば分かる。その安全を保障してくれるありがたみを。
「分かりました。アンネリーゼさんもお願いしていますし、僕からも保護をお願いします。それと、僕も魔物の街に入る許可を頂きたいです」
「うむ。承知した。ユーリのことは、配下に伝えておく。歓迎するので何時でも来てくれ」
「それと、手ぶらでは何なので、何か欲しい物はありますか? 祖母の真似をしたいと思います」
ここで、レオンさんの表情が一瞬固まる。
「……酒を頼めるか? アルコールを造りたいのだがサンプルがなくてな。
出来れば、数種類お願いしたい」
ストアから、ワインを一本購入する。それをテーブルに置いた。
「あ~。そうじゃなくてな。ユーリの元の世界の酒が飲みたいんだ。味を再現したくてな。
でも、それも欲しいな~」
「え? 元の世界?」
「俺は、転生者なんだ。前世は人間だった。〈根源なる者〉に選ばれた時に前世の記憶が蘇ったんだよ。今は、体がフェンリルで擬態して人の姿をしているだけなんだ。
多分だが、ユーミやユーリの世界と近い時代だと思う」
転生者か……。この世界は、どうなっているんだろうか?
でも、僕は未成年なんだよな。アルコールは買えない。
「二年待って貰えれば、買うことも出来るのですが、考えさせて貰っても良いですか?」
「うむ。楽しみに待っているぞ」
アルコールを入手出来れば、滞在も可能かな?
こうして、帰ることになった。
レオンさんにアンネリーゼさんを預けて……。
◇
ログハウスに戻って来た。
荒事にならなくて本当に良かった。
それと、この世界の頂点の一角と出会えた。今の自分の立ち位置を知れたのは大きい。
ステータスを限界まで上げ、魔導具を使いこなせて、始めて対等と言える存在だった。
祖母と敵対したみたいだけど、今は友好的なのでありがたかったな。
それと、麗華さんが来るまで、まだ少しの時間がある。確認しておくか。
『サクラさん。レオンさんのことは知らなかったのですよね?』
『はい、知りませんでした』
『他の〈根源なる者〉は、知っていますか?』
『水属性の巫女が、竜種だというくらいです。火属性と土属性は知りません。
もしかすると優未さんは、出会っているかもしれません。私が生れる前の話になりますが。
それと多分ですが、遠くに住んでいます。干渉はないでしょう』
考えてしまう。
僕が呼ばれた理由……。このまま雑魚狩りだけで良いんだろうか?
レオンさんと協力関係を結ぶのは良いと思う。
そして、戦争が起きるのであれば、今の僕では足手まといになると思う。他の〈根源なる者〉次第だけど。
宝物庫に移動する。
「ステータスを上限まで上げて、ここの装備を使いこなせないと、レオンさんとは対等と言えないよな」
異世界無双とは思わなかったけど、祖母の武器防具だけで何とかなってしまっていた。
ステータスも30%で不満はなかった。ただし、元の世界での基準だけど。
75%まで上げたら、それこそ奇人変人、または超人になると思う。
そして異世界では、上限が見えない。
往復可能な異世界生活……。
どちらかの世界を切り捨てた方が、良いかもしれないな。
◇
麗華さんが来たので、僕も祖母の家に移動した。
「アンネリーゼさんは、帰ってしまいました。
祖母の、漢方薬を求めて来たそうなのですが、製法が残されていないと分かったので。麗華さんによろしくと言っていました」
言い訳にしては、苦しいかな?
社長の真人さんの話を混ぜてみたのだけど……。
そして、テーブルには、何人前とも分からない量のおかずが並んでいた。
「そうでしたの……。張り切って作って来たのですけど。残念ですね」
「また来るかもしれませんので、その時には連絡します」
良い笑顔の、麗華さん。
「さあ。食べてしまいましょう」
はい……。がんばります。
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