第22話 来訪者2

「ふう~。食べた、食べた」


 麗華さんから頂いたお弁当は、美味しかったです。


 それにしても、結構な量だったのだけど、ペロリと平らげてしまった。

 これも、ステータス付与による変化なんだろうか。

 いや、また脂肪が付きそうだな……。

 でも、モニカさんの料理では、それほどの体型の変化はなかった。

 昔を思い出す。

 ダイエット食や、極端に食事の量を減らしマラソンをしても、落ちなかった脂肪。そして、付かなかった筋肉。

 ステータスを受けとったことと関係があるのかな……。サクラさんは、『体に眠っている才能の度合い』と言った。努力の仕方を間違っていた?

 まあ、良いや、そのうち分かると思う。


「ステータス」


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名前:二階堂優莉

レベル:424

筋力:30%  体力:30%

速度:46%  知力:25%

防御力:30% 魔力:未開放

魅力:50%

スキル:言語理解、魔導具所持、ストア、恐怖耐性、

    投擲(NEW)、探索(NEW)、気配遮断(NEW)

称号:異世界人、解読師、道士、異界の顧客

残りステータスポイント:110

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 レベルの上りが悪くなっている。この一週間で結構討伐数を稼いだのだけど、同じ魔物を狩っていてもレベルは上がらないのかもしれない。でもスキルに〈投擲〉〈探索〉〈気配遮断〉が追加された。これは嬉しい。

 ステータスは現状でも、何の不満もない。特に上げたい項目がなかった。

 美形とは感じないけど、見たくなかった自分の顔は、もうそこにはない。

 弱視も治り、眼鏡も不要となった。

 重い脂肪もなくなり、森を疾走出来るだけの体力もある。


「明日、朝九時に迎えが来るんだよな……」


 前回ポイントを割り振った時には、二十四時間くらい気を失っていた。

 明日の用事があるので、今日はポイントを振れないな。遅刻どころか、見つかったら救急搬送されそうだ。

 ポイントを振るのは金曜日もしくは土曜日が良いと思う。


 これからは、週五日の四時間のバイト……か。

 元の世界では、余り良い思い出がない。でも、この世界の方を基準としなければならない。

 サクラさんは、『出来る限り祖母の家で過ごして欲しい』とだけ依頼して来た。

 この家の維持のためにも、日本円は稼がないといけない。

 僕にとっては、異世界に移住し続けても良いのだけど、現実問題として無理があるな。

 行方不明とか捜索依頼が出された時点で、祖母の家に人が入る。

 最悪、父が乗り込んで来て、更地にして、売ってしまうと思う。

 それだけは、避けたい。


「うん。バイト頑張ろう」


 とりあえず、ネットニュースだけ見て、その日は就寝した。





「スーツを買っておけば良かったな……」


 今更であるけど、洋服しかない。

 今から紳士服店に行っても間に合わない。

 学生時代であれば、制服で良かったかもしれないけど、もう社会人だ。

 せっかくのバイトの伝手を得られる機会だったけど、今回はダメかもしれないな。


 悔しがる場面かもしれないけど、少しホッとしている自分がいる。

 まあ、なるようにしかならないか。 終わったら、安いスーツを買おう。


 そんなことを考えていると、迎えが来た。

 挨拶をして、車に乗り込む。

 すると、紳士服店に入って行った。 店は朝九時だというのに開いている。事前連絡してあったのかな?


「サイオン製作に行くのではないのですか?」


「……学生気分が抜けていませんね。 まずはバイトですが、社会人としてのマナーを学んでください」


 はい。おっしゃる通りです。

 採寸して、持ち帰りの出来るスーツを選んで貰う。ネクタイと革靴も購入。あとハンカチも……。

 これらは、どう考えてもブランド品だ。

 支払いは、執事(?)の人がしてくれた。


「代金はおいくらでしょうか? お支払いします」


「 ……社長からの指示ですので、代金は不要です。

 それよりも、これからはサイオン製作の一員としての自覚を学んでください」


 ……何なんだろう。この好待遇は。

 学生時代の教師よりよほど頼れる人だ。

 そんなこんなで、サイオン製作に着いた。

 今は控室に通されて、面接官を待っている。

 テーブルには、一応ノートとペンを用意してある。これは、学生時代の企業面接で学んだ知識だ。スマホではダメだ。

 後は、受け答えが上手く出来るかどうかだ。


 ドアが開いた。 スーツをビシっと着た人が入って来た。いかにも人事部の人だ。

 立ち上がって出迎える。


「二階堂優莉です。本日はよろしくお願いいたします」


「人事部の須藤です。では、契約書にサインをお願いいたします。

 振込先の通帳はお持ちですか? それとも、ネット銀行でしょうか?」


「はい?」


 面接ではなくて、いきなり契約書の取り交わしだった。

 重要だったのが、通勤手段だ。通勤距離は五キロメートルほどあるので、自転車通勤を選んだ。自転車は今日買いに行けば良いと思う。

 それと、途中に大きな川があり、台風などの強風が吹くと通行止めとなるのだそうだ。これは、電車でも同じだと思う。

 気象条件が悪い場合は、事前連絡を入れて休みを取るように言われた。


 その後、会社の各部署の説明を受ける。

 サイオン製作は、部品メーカーとのこと。

 車載品や家電、航空機、医療機器などに使われる部品を組み立てている。


「機械のオペレーターですか。難しそうですね……」


「覚えれば、それほどでもないよ。

 まあ、君には色々な部署を回って貰い適性を見て配属を決めることになると思う。

 週毎に違う仕事に就いて貰うが、何処の部署でも頑張って欲しい」


「はい。ありがとうございます」


 その後、社長に挨拶をして、送って貰った。

 それと、麗華さんは学校だそうだ。いえ、会いたかったわけではありませんよ?

 お重箱を返したかっただけです。渡せなかったので、社長に渡すと大笑いされました。


 通勤路の途中で自転車屋を見つけたので、そこで降ろして貰う。

 ママチャリを購入して、祖母の家へと帰った。

 今日は金曜日だ。来週から頑張ろう。


 来週から……。

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