第35話 人は見た目が大事

 俊夫はカフェで一服した後、そこの店員にウィーンで一番のホテルを聞いた。

 サンドウィッチと紅茶のセットで、1,000エーロ。

 路上にいたあの絵描きに聞くよりもずっと安上がりで、満足度も高い。


 今、俊夫はウィーンの中心部にあるホテルの前に立っている。

 ビジネスホテルくらいにしか泊まった事のない俊夫にとって、荘厳さと華麗さを兼ね備えたホテルに足を踏み入れるのに勇気必要だった。


 ――なんていうわけがない。


 ゲームに遠慮なんていらないと、コンビニにでも入るような気楽な感覚で中へと入っていった。

 そこで俊夫は拍子抜けした。


(あれ、高級ホテルってこんなもんだっけ?)


 内装も豪華で、ホテルのグレードに合っている。

 だが、そこにいる人に問題があった。

 ベルマンが近寄って来ないのだ。


 俊夫は黒いローブに剣を下げている。

 カバンは邪魔になるので、胸ポケットのアイテムボックスや、腰に下げたマジックポーチだけ。

 今の俊夫はいつもの恰好だ。

 ならば、剣を荷物として受け取りに来るべきだ。

 それが来ない。


(なんだよ、この程度のレベルか。AIの作り込みが凄いと思えば、こんな手抜きするなんてどうなってやがる)


 ドア付近で待機しているベルマンを軽くひと睨みすると、フロントへと向かう。


「部屋は空いてるか?」


 俊夫に問いにかけられた若いフロントスタッフが、俊夫の恰好を見て鼻で笑う。


「申し訳ございませんが、お客様がお泊りになれるような部屋はございません。郊外にでも行けば見つかると思いますよ」


 営業スマイルを崩さぬまま、俊夫に”帰れ”と言い放つ。

 ある程度は俊夫もこの状況を想定していた。

 だが、ここまで取り付く島もないとは思わなかった。


「あぁ、そうかい」


 ここは大人しく引き下がった。

 もちろん、安宿を探すためではない。

 反撃のためだ。

 ただ、その場で怒鳴り散らすのは下策。

 そのような事をすれば、俊夫を見下した事が正しかったと証明するようなものだ。

 相手に合わせて、効果的なやり方をするのが嫌がらせとして正しい。


 俊夫はフロント脇にある、コンシェルジュデスクへと向かう。


「やぁ、どうも。ここのコンシェルジュは宿泊客じゃなくても使えるかな?」

「はい。要件次第ではございますが、ご利用になれます」


 こちらにいる年配のコンシェルジュは、俊夫のような恰好の者に対しても柔らかな態度だった。

 それに対して、俊夫は普段とは違い、自分が上位者であるというような態度を取る。


「実はさ。このホテルがウィーンで一番のホテルって聞いたから来たんだけど、そうじゃないみたいだ。この街で一番良いホテルを教えてくれないか?」


 俊夫の言葉に、コンシェルジュは申し訳なさそうな表情を作って答えた。


「当ホテルはオストブルクのみならず、エーロピアン全土でも指折りだと自負しております。申し訳ございませんが、当ホテルよりも良いホテルはございません」


 その言葉を俊夫は鼻で笑う。


「そんなはずないだろう? ホテルのフロントは、ホテルの顔だぞ。それがあのレベルじゃ、ホテルの程度が知れる。見てみろよ。フロントスタッフのチーフが、あいつに注意しようとすらしない。つまり、あんな対応が正しいと思っている証拠。このホテルのグレードがたいしたものじゃない、という立派な証拠じゃないか」

「不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」


 そういって、コンシェルジュは頭を下げる。

 そしてその時、自身の顔が俊夫の目線から外れた瞬間、コンシェルジュは俊夫を見定めた。

 コンシェルジュという”ホテルの何でも屋”としての働きを求められる部署には、基本的にホテルの仕事に慣れたベテランが配属される。

 彼もまた、その年相応の経験を積んでいた。


 頭を下げた一瞬では多くの事はわからない。

 それでも彼は、俊夫のローブ、靴、そして腕時計を確認した。

 今のご時世、魔神信奉者のようなデザインの服を着るのはあり得ない。

 だが、今の状況はその素材の品質こそ重要視される。

 

 生地が分厚いにも関わらず、柔らかそうなローブもなかなかの逸品だが、彼には腕時計の方が気になった。

 懐中時計は一部の者には広まってきている。

 だが、それは王侯貴族といった限られた者だ。

 このホテルのロビーにもあるように、大きな時計ならほとんどの者が持っている。


 精密機器の小型軽量化というのは非常に困難だ。

 これはいつの時代でも付いて回ること。

 魔法が存在することにより、科学分野の発達が遅れているこの世界では、俊夫の腕時計はオーパーツだ。


 特に俊夫の時計は別格。

 金無垢で作られた腕時計は、上品な輝きを見せていた。

 それは名前を言えば、ほとんどの者が知っているだろう有名メーカーの数百万はする時計だった


 俊夫は、腕時計にこだわりを持っていたわけではない。

 仕事に必要だったから、購入して普段から使っていただけだ。


 吊るしのスーツに、数千円の時計をした者が――


”良い儲け話があるんですよ”


 ――なんていっても誰も信用しない。


 そんな恰好をした者は”お前がまず自分で金を稼げ”と返されるだけだ。

 そこから契約に持ち込むのは至難の業。

 俊夫は契約を取って稼いだ金を、自分の身だしなみにつぎ込んだ。

 高価な物を身にまとい、儲け話の信憑性をあげる。

 俊夫は腕時計を買ったのではない。

 見た目を整える事で、信用を買ったのだ。


”自分は詐欺には騙されない”


 そんな事を言う者は、金の匂いを嗅ぎ分ける自信があると思っている。

 だから、俊夫は強烈な金の匂いを纏って行く。

 その強烈な匂いで、鼻を麻痺させるのだ。


 自分は大丈夫だと思っている者は、一度でも信じられると思わせれば、あとは簡単だ。

 なんといっても、そういう者達は自分を信じている。

 あとは自分の思い込みたい内容に合わせて、勝手に理論武装してくれる。

 自分の判断は間違っていない、そう思い込むために。


 そして今、俊夫が予期せぬところでも、その効果を発揮した。

 謝罪が終わり、頭を上げたはずのコンシェルジュ。

 俊夫の腕時計は、彼の目を奪い続けた。

 彼もこのようなホテルで働いているのだ。

 物を見る目は鍛えられていた。

 その目で見る限り、魔神信奉者のような恰好以外は泊まることに問題は無さそうだ。


「当ホテルに宿泊されているお客様の安全を考えれば、そのような恰好をされている方をお泊めするのは難しいかと」


 とはいえ、俊夫のような恰好をしている者を泊めるには少々厳しい。

 ホテルに泊まっている他の客の事を考えれば当然だ。

 それに誰でも泊まれるホテルというのは、ホテルの品位を下げる事にもなる。

 彼もまた、俊夫の宿泊をやんわりと断った。


「この格好と言われてもな。一人旅だから、安全のためにこの格好をしているんだ。そもそも着替えるための部屋を借りられないというのならどうしろと」

「確かにそうですねぇ……」


 彼はしばし考え込むと、俊夫に問いかける。


「当ホテルにふさわしい着替えはお持ちでしょうか?」

「持っている」


 俊夫はローブの内ポケットから、モーニング一式の入ったスーツケースを取り出すと、ケースを開いて中身を見せる。


「これなら問題無さそうですね。念のためにローブを御脱ぎ頂いても?」

「まぁ、それくらいなら」


 俊夫は大人しくローブを脱ぐと、ローブを手に持った。

 それを見て、コンシェルジュは俊夫をフロントへと誘導し、受付を行おうとする。


 だが、それを止める者がいる。

 フロントスタッフのチーフだ。

 40過ぎの女性は、キッパリと断った。


「そんな人を泊めるなんて困ります。それにフロント業務は我々の仕事です。例えエミールさんでも、越権行為ですよ」


 彼女の言う事も当然だ。

 それぞれ自分の仕事があり、その領分を侵すような真似はするべきではない。

 その暗黙の了解を破ったコンシェルジュのエミールを、チーフは非難した。


「いいえ、こちらのお客様は当ホテルにふさわしい方だと思われます。お泊めするのに問題無いかと」


 エミールの言葉に、チーフはうさんくさそうな目で俊夫を見る。

 そして、溜息を吐く。


「エミールさんが、そこまで言うなら……。それで、一番安い部屋ですか」


(このクソアマ!)


 その無礼な物言いに、俊夫は内心ブチ切れた。

 いくら俊夫が怪しかろうと、接客業に携わる者が口に出していいセリフではない。

 自分が徹底的に上位者であると、身分を偽ろうと思った。

 予想以上の相手だと気付いた時、相手の動揺が激しくなるからだ。


「一番良い部屋に決まってるだろ」


 俊夫の言葉に、チーフだけではなくエミールも顔を少ししかめる。


「一番良い部屋ですか。最上階のロイヤルスイートとなりますと、250万エーロになりますよ」


”この世間知らずが”


 とでも言いたいのだろうか。

 半笑いで俊夫に値段を告げる。


(マジで? やっぱ、高いな)


 せいぜい100万程度だと思っていた宿泊代金が、予想の2.5倍だった。

 それでも俊夫は平静を装い、アイテムボックスから3,000万エーロを取り出すと、カウンターに置く。

 これには、払えないだろうと思っていた者達が驚く。


「とりあえず、10日ほど泊まるつもりだ。先払いしておこう」


 これは意地だ。

 たかがNPCに舐められたくないという、つまらない意地だ。


 俊夫は”もったいない精神”を持つが、ケチではない。

 腕時計もそうだったように、必要だと思う物には大金を支払う事をいとわない。

 そして、ここは支払うべきところだと判断した。


 ――快適に泊まるため。

 ――NPCに舐められないため。

 ――そして、意趣返しのためだ。


 後ろ2つは必要のない意地ではあるが、ゲームの中でくらい最高級ルームに泊まってもいいだろうという思いもある。


「ですが、さすがにロイヤルスイートに、身分定かではない者を泊める訳には……」


 この段階でも断ろうとするが、これに関しては仕方がない部分もある。

 怪しい人物を泊めて、何か罠を仕掛けられたりしたら大変な事になる。

 チェックアウト後にホテルの従業員が確認するといっても、魔法の発達している世界だ。

 発見が困難な罠を仕掛けられる可能性が高い。

 そうなると、今後ロイヤルスイートに泊まるような富豪や要人に危険が及ぶかもしれない。

 それは避けなければならない。


 だが、俊夫はこの問題を解決する方法を持っていた。


「身分の証明か」


 俊夫はローブの内側から、2通の手紙を取り出すと、よく見えるように差し出す。


「ミラノ公国のフランツ陛下直筆の身分証明書。もう片方はポート・ガ・ルーの国王陛下直筆の感状だ。もちろん、これでも身分が定かではないというなら、帰らせてもらうがな」

「拝見させて頂きます」


 この出来事に付いていけなかったチーフを尻目に、エミールが俊夫から身分証明書の方を受け取り、中身を確認する。

 見たことがないので、直筆かは判断できない。

 しかし、王家の紋章入りの皮の封筒は本物だろうと判断した。

 王家や貴族家の紋章を勝手に使い、身分を騙るのは重罪だからだ。


「確かに確認させて頂きました。ホテルの者の無礼な振る舞い、誠に申し訳ございませんでした。どうぞ、こちらの宿帳にご記帳ください」


 俊夫が記帳していると、エミールが玄関口で待機していたベルマンを呼ぶ。

 そして、ベルマンが来た時に俊夫がエミールに質問した。


「そうだ、エミールだったな」

「はい」


 俊夫に名前を呼ばれ、戸惑いながらもエミールは俊夫に返事をする。


「このホテルは本当に、この街で一番のホテルなんだな?」

「左様でございます」

「ふーん」


 エミールの返事に、俊夫は納得いかない素振りを見せる。

 俊夫の嫌がらせは、これからなのだ。

 ただ、宿泊するために公王直筆の身分証を見せただけで、鼻を明かせてやったと満足するわけがない。


「泊まる前とはいえ、客に無礼な振る舞いをするフロントスタッフ」


 俊夫に視線を向けられ、ビクリとフロント内にいた者達は体を震わせる。


「ホテルに入って来た客の荷物を受け取ろうともしない、ベルマンにポーター」


 エミールに呼ばれたベルマンがビクリとする。


「挙句の果てには、剣を下げたままの客を警戒もせず、ただ突っ立っているだけのガードマン」


 俊夫はロビーの端に立っているガードマンに視線を向けた。

 こちらは距離が開いているので、反応はない。


「本当に一番?」


 今度は、俊夫の問いかけに即答できなかった。

”お前が怪しい恰好をしているからだ”とは言えない。

 ならば、何故ガードマンが俊夫の周囲に近寄って来なかったのか?

 そう問われれば、返す言葉がない。


「あぁ、一番なのはガワだけか」


 痛烈な言葉だった。

 ホテルは立派だが、中で働く者はそれに見合わない。

 そうハッキリ言われたのだ。


「誠に申し訳ございません」


 これには謝罪の言葉しか返せない。

 エミールの謝罪に合わせ、周囲の者達も口々に謝罪の言葉と共に頭を下げた。


「謝罪は結構。行動とそれに伴う結果で示せ」


 俊夫は心にもない事を言う。

 本当に謝罪がいらないというのなら、非難するような事を言う必要はなかった。

 今の言葉は、ただ自分が上位にいるという事を実感したいためだ。

 偉ぶりたいだけだった。


「エミール。君が部屋まで案内してくれ。他の者はイマイチ頼りない」

「かしこまりました。それでは先にお返しする、500万エーロをご用意させていただきます」

「いや、かまわん。ルームサービスを頼むだろうから、それで払っておいてくれ。足りなかったらチェックアウトの時に言ってくれ」

「はっ」


 エミールはフロントから部屋の鍵を取ると、俊夫のローブを受け取る。

 剣も受け取ろうとしたが、それは俊夫が断った。

 一人で持たせるには量が多いと思ったからだ。


 これは別にエミールを気遣ったわけではない。

 手が塞がっているとドアを開けたりする時に、もたつかれたりするのが嫌だっただけだ。

 それなら、誰か一人を連れて行けばいいと思うかもしれないが、ベルマン達にチップを払うのが嫌だった。

 ムカついていても、人を使えばチップを払わなければいけない。

 嫌いな奴に、1エーロたりともくれてやるつもりはない。


 俊夫は金を使う時はパッと使うが、使わない時は断固として使わない。


「それでは、こちらへどうぞ」


 エミールの先導で、フロント脇へ移動する。

 そこには、俊夫の見慣れた物があった。


「エレベーターか」

「左様でございます。我が国では魔道リフトと呼びます。ここは最上階への直通でございます」

「なるほどな」


 エミールは、さりげなくこの国での呼び方を教えた。

 これはこの国での呼び方と違う呼び方をし、魔道リフトが話題に出た時に恥をかかさないためだ。

 彼はこういう配慮ができる男だった。


 魔道リフトは懐かしい感覚だった。

 エレベーターと同じ、あの浮遊感が俊夫を襲う。


(テレビにゲーム機……。いや、なんでもいい。電気製品に触れたい)


 魔道エレベーターというからには、魔力で動くのだろう。

 そんな得体のしれないものよりも、良く知る電気製品を触りたかった。

 携帯音楽プレイヤーのような小さなものでも、文明の利器が手元に今届けば狂喜乱舞するだろう。

 俊夫に元の世界の事を忘れることなんてできなかった。


「ゾルド様、こちらでございます」


 エミールは身分証明書で俊夫の名前を確認していた。

 そのエミールの案内で入った部屋は、最上階のフロア半分を使った大きな部屋だった。


(どうしよう……。こんな部屋いらねぇよ)


 俊夫は腹が立ったから、見栄を張って一番いい部屋を要求した。

 その事に後悔してしまう。

 俊夫には6畳間の自室くらいの広さがちょうど良いのだ。

 くつろげる広さと、楽しめる広さは別物。

 これだけ広い部屋は、家族や友達を連れて泊まれば楽しめるだろう。

 だが、くつろぐために高級ホテルに来た俊夫にとって、この部屋を選んだのは間違った選択だった。


 エミールがクローゼットにローブをかけているので、一緒に剣やナタも預ける。

 こんなものを下げたままでは、ゆっくりと休めない。


 その後は、部屋の施設の使い方を軽く説明された。

 トイレが魔道具で洗浄の魔法を使えるようになってるあたり、高級ホテルらしく不便さを感じない。


「以上でございます」


 一通り説明を終えたエミールが、ロビーに戻ろうとする。

 そこで俊夫は100万エーロの硬貨を取り出す。

 それをエミールは固辞する。


「ゾルド様。このような事は申し上げたくないのですが、ロイヤルスイートにお泊りになる方でもチップは1万エーロ前後です。さすがに多すぎます」

「そうか、俺は世間知らずのようでな。そういう事を教えてくれるのは助かる。……そういえば、チップはホテルの者で分配すると聞いた事があるが、ここもそうか?」

「はい、当ホテルもそのようになっております」

「そうか」


 俊夫は10万エーロを取り出し、それを手渡す。

 そして100万エーロを、エミールの胸ポケットに入れた。


「ゾルド様!?」

「エミール、君のお陰で門前払いという不愉快な思いをせずに済んだ。こちらは君が受け取ってくれ」

「さすがに金額が――」

「一度、差し出した金だ。恥をかかせないでくれ」

「――ありがとうございます」


 エミールは今まで以上に心の籠った礼をする。

 10万エーロは、仲間と分けるチップ。

 100万エーロは、エミール個人が受け取っていいチップ。

 そういう意味で俊夫はチップを渡し、エミールも間違いなくその通りの意味で受け取った。


 当然、俊夫はエミールのために高額のチップを払ったわけではない。

 エミールは受け取ったチップの額を言いふらしたりはしないだろう。

 だが”あの客は太い客だ”と噂をするはずだ。

 そうなった時、フロントスタッフやベルマン達は悔しがるだろう。


”もっとまともな対応をしていれば”と。

 

 それが目的だ。

 せっかく高い宿泊費を払ったのだ。

 それ相応に過ごしやすい環境になって欲しい。

 それに、これ以後は高額のチップを払うつもりはない。

 例え高額のチップを貰えなくても”自分達の働きが悪かった。次はもっといいサービスを提供しよう”と思ってくれる。


 人に金を払う時は、最初に払わないと意味がない。

 ホテルを出る時に多くのチップを渡しても、良いお客さんだったと思われるだけだ。

 最初に多くのチップを渡しておけば、より良いサービスで快適に過ごせて、良いお客さんだったと思われる。

 金の賢い使い道だ。


 もっとも、その場の気分でロイヤルスイートに泊まるような行為は賢いとは言えない。

 当然ながら俊夫も完璧ではなく、ごく普通の人間だということだろう。

 性格以外は。

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