十八 浸食

 ふわふわと不思議な感覚に目を開けると、雨の中に立っていた。

 三毛猫が足元にまとわりついて、何度か回った。

「そんなに回っても、何もやれないよ」

 そう呟いたら、あっという間に足元を駆け抜けて行ってしまった。

 かわりに、地面がじわじわと、遠くから青色に浸食されていく。

 雨に紛れて、海が地上に昇ってくる。

 奇妙な生き物たちがその海へ影を巡らせて、こちらへ向かってくる。

 急いで眼帯を着ける。

「……大丈夫か」

 呼び掛けられて顔を上げると、小出が立っていた。

 真後ろから傘をさしかける人影があるが、よく見えない。

 小出はさっきの猫を抱いているが、暴れている。

「痛っ」

 猫に噛みつかれ、声を上げた瞬間、小出が歯を食い縛るのが見える。

 牙のような、大きな犬歯。

 身体が硬直したように動かない。

 小出は猫を追い、傘をさしかけていた人物がそれを追う。

 ぼんやりと見ていると、徐々に視界が青色に染まり、意識を失った。

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