四 悪夢

 嫌な感じだ。

 片腕がいやに重い。右目は髪に塞がれたままで、視界が悪かった。

 仰向けで眠ると夢見が悪い。だから懸命に身体を右に向けて寝るのだが、朝起きると仰向けに寝ているのは何故なのだろうか。

 自分を取り巻く全てが、思い込みの様な気さえしてくる。

 髪をかきあげようと、右手を持ち上げた。

 無かった。

 手首から先が消えていた。

『君の手が欲しいな』

 そんな声を聞いた気がした。

 おかしいな。僕の利き手は左手なのに。

 左手で髪をよける。

 何かがおかしい。

『君の、目も欲しい』

 そんな声も聞こえた気がする。

 ああ、右目も無くなっているのか。

 何故か、とてもおかしかった。

 おかしくておかしくて笑っているうちに、僕は残った左目から涙を流していた。

 おかしくて泣いているのか、悲しくて泣いているのかわからないのが悲しくて、おかしくて。

 誰かの代わりに泣いているような気がした。

 そんな夢を見た。

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