最強の傭兵は異世界を征く
ヒラン
第1話 異世界からのメール
「そうか……もうこんな日なんだな」
俺は逆島当麻。元社会人で現在引きニート。そして廃人ゲーマーの新入りだ。
訳有って会社をクビにされて、今では再就職を希望していたのだが……だがあの社長が変な噂を流したのか、俺を再就職不能にしやがった。俺が何をしたんだって言うんだか……。
親は警察に相談したが、時はすでに遅い。あの社長、警察に賄賂を渡してあったのか、何をやっても聞く耳は持たなかった。
上司の権力のせいで俺は完全に無職になって、この扱いである。
家族は決して俺を責めてない。近所にもたまには顔を出しているが、無職である事は変わらない。
俺は現在、オンラインVRゲーム「ArmsFantasy(通称AF)」をプレイ中、このゲームは剣と魔法と銃、機械が合わさったオンラインRPGで、プレイヤー人口数が1億人を越えるほど人気高いゲームだ。
ヌルゲーってほどではないが、自由度が高く、どこから攻略しても良し、連盟とかを作り上げて英雄っぽくやってよしのとにかく自由度の高いものだ。そんでもって今日はそのゲームのサービス終了の前日。別れを惜しむ仲間と最後のボイスチャットをしていたのだった。
『そうですね。長くも楽しかった日々も明日で無くなるんです』
『じゃあ最後にブラックドラゴンを狩りに行くか?』
『おいおい。それはレイドボスじゃん。終了前日だしできないだろ』
『残念……』
仲間たちの会話がとても楽しい。会社をクビにされた俺にとって、仲間たちの存在は金よりも価値がある。彼ら無しでこの連盟「星屑の戦旗」はなかっただろう。
共に戦い、共にクエストをこなし、そして連盟を大きくしていった。
それぞれの活躍のおかげで連盟の地位、名声を手に入れ、今でも有名な連盟として全国で名を響かせている。
「サービス終了まで、後30分」
『時間ってホント無慈悲だよな』
『しょうがないよ。長い間、武具の性能がエラッタしてメンテに入ったし、後はレイドボス戦で報酬の増殖バグが発生したりしたしな』
『今振り返れば、俺等、かなり暴れたよな』
「ああ、上位1位までとはいかないけど、上位3位は俺達にとってはすごい誉れ高い事だよ。よく頑張った」
『かなり死にまくって笑った時もあったよな』と思い出話をして、時々泣いて、時々喧嘩したりと楽しかった。一人のプレイヤーの言う通り、時間というのは時として残酷だ。だが、だからこそ新たな出会い、新しい日々が待っている。
『楽しい時間も、後10分で終わりか……』
『眠たくなったからそろそろ落ちるわ。皆、今までお世話になったな。これの続編が出たら、また一緒にやろうぜ』
1名のプレイヤーがログアウトした。彼の名は「コズミック」。PCの種族は鬼人族で、俺の連盟内で最強のアタッカーだった。RPもクエストも、手伝ってくれるのはほぼ彼だった。彼の存在は俺達にとって、戦神と呼ばれる存在へとなっていた。
『私も落ちるー。明日から大仕事だし、皆今までありがとね』
また一人、プレイヤーがログアウトする。彼女の名は「悪魔定食」。PCの種族は妖樹族で、この連盟内では数少ない女性プレイヤーだ。彼女は多くのクエストをこなして、時としてレイドボスを一撃で倒すスキルを持ってきては周りのプレイヤーを圧倒してきた。そして職業が暗殺者という上位職であるという事。
「皆……お疲れ様」
涙を拭きながら喋る声も聞こえ、次々とプレイヤーがログアウトしていき、最後に残ったのは俺だけとなった。
「……遂に俺だけとなったか」
空白となった長の椅子。それに座る前に、俺は宝物庫へと足を運んだ。
中はイベントやクエストで貰ったアイテムが大切に保管されている。
ほとんどは俺に「売っていいよ」と言い残して去る者もいた。
「こんなの……売れるわけないだろ。バカ野郎」
大切なアイテム、武具を売れる訳がない。サービス終了までこの保管庫に保管しておくのが、最後に残ったプレイヤーができる事だ。
俺が保管庫に来たのは、あるアイテムを取りに来ただけ、そう最深部に刺さってる聖剣のようで刀身が細い剣。
俺の連盟の象徴であり、最強の武器。名は「
あらゆる属性攻撃を兼ね備え、機械系のエネミーの防御力すら豆腐を切るかのように切り裂き、経験値の高い硬いエネミーも軽く屠れる。ぶっ壊れ性能のように思えるほど強力な剣だ。
こいつを作る際、大晦日で得たボーナスを全部突っ込んだ人いたなぁ。懐かしい。
アイテムを引き抜き、装備する。そして出る際に「ありがとう」と言って扉を閉める。
暫く歩き、長の椅子に座る。
そして上を向き、思い出に浸る。寂しかった、悔しかった、敵が強かった、辛くも勝利した、皆と一緒に笑った、その思い出に浸るうちに、時間は残り2分を切っていた。
「さようなら……俺達の思い出。ArmsFantasyⅡが出たらまた作るからな。あったらだけどな」
そう言ってログアウトの画面を開こうと手を伸ばす。
その時、一通のメールが届いた。
「……こんな時に誰だ?」
メールを開く、内容は単純かつ、何かの誘いのような文だった。
『新たな冒険をしませんか?』
それだけだった。送り主は不明。プレイヤーネームが書かれてない。公式の悪戯かと思うが、不思議に俺は返信する。『続編であるならぜひ』と送った。
その時だった。俺の周りに光の粒のようなものが出てくる。
運営がアバターを消しにかかってる証拠なのだろうか?俺は必至でVRの装置を外そうとするが、なぜか外れない。
「ど、どうなってるんだ!?クソ!早くログアウトを……!」
ログアウトの画面を出し、切ろうとした途端、俺は謎の光に包まれる。
そしてそこで俺の視界は暗転したのだった。
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