第112話
神殿での奇跡から1週間、俺たちはトマヒヒンで様子を伺っていた。
「丁度その時神殿に居て、俺はその奇跡が起こるところを見たんだぜ。普通の石造りだった女神像がピカーって光り
「何でも、司教様と領主様の祈りが通じて女神様が降臨なされたって聞いたぞ。」
「司教様と領主様は奇跡の事を報告するために、王都へ向かわれたらしい。」
毎晩、夜の居酒屋でこの手の話を耳にする。奇跡を見たって言う男は本当に神殿に居合わせたのかも知れないな。きっと酒飲んだら死ぬまでこの話をするのだろう。良いネタ掴めて良かったね。
あとは司教様とフェルプス閣下には、是非とも自分の功績だと猛烈にアピールして頂きたい。奇跡の事は全部差し上げますから。俺は面倒事に巻込まれたくないし、きっとあのドジっ子シスターも聖女様なんて祭り上げられても困るだけだろう。
街中の様子と共に、召集された農民兵たちが野営していた場所も確認している。奇跡が起こった日に早くも解散となった様だ。2か所とも人っ子一人いない。食料を積んだ荷車も街から出て行く様子もない。
1週間見張っていてこの調子なので、戦争は回避されたと判断した。ドワーフの店に行って状況を話すと、また伝書鳩が放たれた。働いてるなあ伝書鳩。ご苦労様。
*****
ラジアンへ戻る前夜、夢の中にアリア様がお出ましになった。
(ジローさん。今回は良くやってくれました。おかげで戦争は回避できました。)
これも
(いいえ。ジローさんが居なければあの奇跡は起こせませんでした。もっと誇って良いのですよ。)
ありがとうございます。それではひとつお尋ねしても宜しいでしょうか。
(何かしら。)
今回はコーラス様ではなく、何故アリア様が直接お力をお貸し頂いたのでしょうか。
(こーちゃんはまだ眠っています。なので私が助力したと言う訳です。)
ですがここはコーラス様が管理されている世界。そこで別世界の女神で在らせられるアリア様が力をふるわれたとなると、アリア様のお立場が悪くなりはしないでしょうか。
(それはちょっと困った問題ね。)
それに、お目覚めになられたコーラス様が事の仔細をお知りになったらお怒りになると思いますが・・・。
(それね。怒ったこーちゃんを宥めすかして、また仲直りするところが良いのよ。どうやってご機嫌を取ろうかと考えるだけでわくわくしちゃう。)
・・・。それとあの女神像なのですが、何か特別な力が宿っているのでしょうか。
(ジローさんの回復魔法に、もうほんのすこーし極僅かに私の神威を込めたわ。だから怪我や病気の快復に恩恵があるかしら。あとは安産とか。)
*****
寝て起きて、返って疲れが溜まるのは何故だろう。また何故安産の御利益が?
ともかくミッションコンプリートで良いですよね。アリア様。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます