第98話
ケネスにも聞かれたが、俺は
「悪いが俺もそんなに詳しい作り方は知らないんだ。」
「儂は、儂はな、これでもこの街一番の酒造り職人だと自負しとるんだ。ジロー、頼む。頼むよ~。」
大分酔っ払って来たな、
「今まで飲んだ事のないこの味わい。作り方も見当つかねえ。ほんのちょっとでも良いんだ、何か教えてくれよ~。礼は何でもするからよ~。」
ユルゲンが抱き着いて来る。離れろ!殴るぞ!髭もじゃのオヤジに抱き着かれて喜ぶ趣味は俺には無いんだ。酒臭いし。
「分かった、分かった。明日俺が知ってる事を教えてやるよ。」
「何?本当か?嘘じゃないだろうな?」
「どうせ今日はこの館に泊めてもらうしかないだろう?逃げたりはしないさ。」
ユルゲンは大喜びで、祝杯だ!と言いながらまた飲んでいる。どんだけ酒好きなんだ、ドワーフ。
そして翌朝。俺は
見たところ酷い二日酔いって言うヤツは一人もおらず、みんなちょっと体が重いな、くらいの体調みたいだ。やっぱりドワーフは肝臓の働きも強いらしい。
「やあ、お早うジロー。昨夜は楽しかったな。」
何と言うか、一気に距離感が縮まった感じ。俺が入社したての頃の飲みニケーションを思い出させるな。
「お早う。昨夜はかなり飲んだと思うが、体調は大丈夫なのか?」
「あのくらいでどうにかなるドワーフは居ねえよ。それよりお前は二日酔いにはなってないのか?」
「ああ。俺はちょっと特殊な体質でね。」
ユルゲンは俺をジロジロ見ながら小声で聞いて来た。
「お前、もしかしてハーフドワーフなのか?」
「違うよ!」
おいちょっと待ってくれ。どう見たら俺がドワーフの血を引いていると見えるんだ?体格も違うし、髭は薄い方だぞ。
俺も人種差別は良くないと思うが、自分がドワーフになりたいかと聞かれたら、答えはNOだ。即答だよ。ゲームのキャラ設定ならアリかも知れないが、生身のドワーフになりたいかと言われれば抵抗がある。ドワーフは良い奴が多そうだから嫌いじゃないけど、良いお友達で居ましょうね。
朝からどっと疲れた。
*****
「この辺りではどんな酒を造ってるんだ?」
「主にはエールとかワインだな。」
昨夜約束したブランデー作りの話をしている。部屋にいるのは親方のユルゲンとその弟子2名だ。弟子にもブランデーの味を覚えさせるためにちょっとだけ・・・、いやコップ1杯ずつ飲ませている。
美味い美味いと言ってあっという間に飲み干してケロッとしている。全く
「ワインを作っているなら丁度良いな。実はこの酒はワインを元に作っているんだ。」
この話はドワーフ達には衝撃的だった様だ。
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